表題番号:2004B-955 日付:2005/03/14
研究課題改正社債・株式等振替法におけるいわゆる「善意取得」-振替記載による権利移転の法理-
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 助教授 柴崎 暁
研究成果概要
改正社債・株式等振替法においては、振替機関の過誤記載の場合などに生じる「善意取得」に関する規定がある。この「善意取得」は、従来の有価証券法理における「善意取得」とはその要件効果を異にする制度であると考えられている。有価証券法における善意取得とは、資格証明力ある証券の占有による権利推定の結果、証券喪失者側の帰責事由の有無(占有委託物か占有喪失物か)を問わず占有者の権利を認める反面として証券喪失者が失権するものであった。しかし、この法理は証券の特定性を前提にした原理であるから、証券の特定が困難な券面廃止・口座登録の有価証券には適用が困難であるというのである。そこで振替法の善意取得においては、失権させられる「喪失者」にあたる者が存在しないという構成を採らざるを得ない。とはいいながらも、なお証券の特定が可能な場合(ある銘柄の株式がAによって引き受けられ、何者かによって振替指図が偽造されBに取得されたことになっている場合など)には物権的追及は可能であると解する余地があるのではないか。本研究では1981年以降20余年の券面廃止有価証券制度の歴史を有するフランス法における、口座に登録された財貨の物権的取扱に関する論争を扱った。特に課題研究者が注目したのは、券面廃止有価証券の物権的追及を肯定したうえ、民法典2279条(即時取得制度)による権利保護が必要であることを説く、Christine LASSALASの学説である。