表題番号:2004B-950 日付:2005/03/22
研究課題不動産投資信託の収益率のリスク・モデルに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 教授 川口 有一郎
研究成果概要
本研究では、不動産投資信託(REIT)のマルチファクターモデルを用いて、”Good”状態において、低レバレッジのREITはそのNAV(Net Asset Value)に対してプレミアムで取引されること。また、”Bad”状態においてはその逆に高レバレッジのREITがNAVに対してプレミアムで取引される、という仮説を米国のREITデータ(Center for Research in Security Prices (CRSP) tapes のNYSE,AMEX, and NASDAQ return files、およびCompustat files of income and balance-sheet data. From the CRSP files)を用いて実証した。また、そこでは、二つの状態を考慮したFama-French型のマルチファクターモデルを用いて、REITの財務戦略(レバレッジ戦略)が投資家に超過収益率をもたらしうることも示した。特に、確率的な状態遷移を考慮したマルチファクターモデルがREITのそうしたスタイル分析には有効であることを示した。さらに、本研究の結果は、Myers (1977, 1984), and Myers and Majluf (1984)のpecking order hypothesisと整合的であることも確認された。そうしたREITの投資特性は、REITの原資産―賃貸ビル-の取引市場は情報非効率であるのに対して、そのエクイティの請求権が売買される証券市場が情報効率的であることに起因している。本研究ではREITの特性を的確に捉えることが可能なマルチファクターモデルを作成できた。なお、JREITに関する実証研究はそのデータの蓄積を待って今後の課題としたい。