表題番号:2004B-933 日付:2005/02/22
研究課題アメリカ文学研究の日本におけるライティング・センター運営への応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際教養学術院 教授 大和田 英子
研究成果概要
コンポジション・スタディズは日本では新しい分野である。本研究では英語圏の大学で設置されているこの分野の基本文献をふまえ、従来のアメリカ文学研究との連関を計った。歴史的にみるならば、ライティングセンターの設置とコンポジション・スタディズは互いに補完しながら発展してきた。ライティングセンターは、第二言語として英語を教授するアプローチとは異なり、よりよいプロダクツを目指すのではなく、よりよい書き手の育成に主眼を置いている。本研究では、こうしたメソッドの活用法、および英語でのライティング能力を論理レベルで向上させるという方法を研究し、「読み」の対象となっている文献を解析することから、トピックの選定と論の発展の仕方に着目した。今回の研究では、理論的には、論理のつながりに着目することにより、英語から日本語への翻訳文における誤りを分析し、また「解釈」および「書く」という行為から、どのような論理構成が見えてくるのかを考察した。さらに、論理レベルから移行し、文学研究における主体の問題が解釈に与える影響を、フーコーの唱える理論面から考察した。こうした理論的側面に加えて、ライティングセンターでの一対一セッションから、書き手に対し、権威を持った主体として対するのではなく、論理を追いつつ、効果的な論文を作成する指導を行い、その達成を助ける作業がどのようになされるかを視野に入れつつ、理論から実践への架橋ががいかに可能かを模索した。さらに、こうした考察に基づき、単なる文法的間違いに主眼を置くのではなく、内発的な思考能力を引き出すという作業が必要であり、理論に依拠しながらも、個別の書き手のニーズを考慮しつつ、実際の指導にあたった。
日本に類似の分野がないため、英語におけるライティング指導に関しては、単なる文法的間違いを直す、つまりプルーフリードのレベルから、書き手の内発的思考能力を引き出すレベルへの適応には、さらに理論的考察を要する。しかし、学習者の基本的学習態度に方向性を与えるならば、第二言語でのライティング指導にも、論理レベルでの思考力が大きく関わっている。それ故に論理的に葛藤を起こしている事柄に注目しつつ、プロダクツを改良する方策を導き出す方向性を見いだせよう。こうした知見に基づいて、文学作品の解釈とその文化的背景を利用しつつ、学習者の主体と作品の主体との葛藤を意図的に作り出し、そこから生まれる問題意識を中心に論理構成を行い、それに依拠しつつ、リサーチの深化、論の発展のきっかけを作る、疑問点の創出など、文学研究の枠にとどまらないライティング指導法・読解力の育成法を用い、具体的な文学作品考察を試みた。