表題番号:2004B-923 日付:2006/03/24
研究課題高齢者の上気道感染症防御因子に対する運動の影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 助教授 赤間 高雄
研究成果概要
【目的】加齢にともない免疫機能は低下する.高齢者が健康で活力ある生活を過ごすためには免疫機能の維持が重要である.長期間継続的に行なう適度な運動は,高齢者の免疫機能を改善する可能性があるが,まだ知見が少ない.本研究では,前期高齢者(65歳以上75歳未満)と後期高齢者(75歳以上)において免疫機能と身体活動量との関係を横断的に検討した.
【方法】高齢者99名(前期高齢者36名,後期高齢者63名)を対象とした.免疫機能の指標として、1分間に採取した唾液量(唾液分泌速度),唾液中の分泌型免疫グロブリンA(SIgA)濃度,およびSIgA濃度と唾液分泌速度とSIgA濃度との積(SIgA分泌速度)を測定した.身体活動量としては,日常生活による身体活動の消費カロリーをライフコーダー(スズケン社製)によって2週間測定し,その平均値を1日あたりの身体活動量とした.
【結果】唾液分泌速度は,前期高齢者において身体活動量と有意な正の相関(p<0.05)が見られたが,後期高齢者では両者に相関が無かった.SIgA濃度は,前期高齢者と後期高齢者ともに身体活動量と相関は無かった.SIgA分泌速度は,前期高齢者において身体活動量と有意な正の相関(p<0.05)が見られた.しかし,後期高齢者では両者に相関がなかった.
【考察】前期高齢者では,身体活動量が多いほど唾液分泌速度とSIgA分泌速度が大きく,免疫機能が高いことが示された.しかし、後期高齢者では唾液分泌速度,SIgA濃度,およびSIgA分泌速度と身体活動量との関係はみられなかった.高齢者では加齢による免疫機能低下がおこるので、前期高齢者までに身体活動量を増やすことによって,免疫機能の低下が抑制される可能性も考えられる.