表題番号:2004B-913 日付:2006/04/27
研究課題モバイル学習環境における適応的コンテンツ自動生成のための位置情報英語コーパスの作成
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 助教授 松居 辰則
研究成果概要
 本研究の目的は,携帯電話の英語学習への積極的な利用を目的とした,位置情報を利用した英語文,英語問題の自動生成のための位置情報英語コーパスを作成することである.この成果は,新しい学習観に基づく英語学習(Communicative Approach)の実現に寄与すると同時に,人工知能研究(知的教育支援システム),コーパスに基づいた新しい言語処理方式への技術的側面からの貢献も期待できる.情報通信技術の進展と低価格化により,学習環境にインターネット等の情報通信技術を積極的に導入し,従来の学習環境では実現困難であるとされていた学習環境が比較的容易に実現可能となった.一方,モバイル端末(携帯電話,PDA(Personal Data Assistant))を学習環境に積極的に導入し,調べ学習や発見学習の支援ツールとして有効活用する試み行われ,その成果が関連の学協会で報告されるようになった.本研究では高等教育機関における大人数の教室講義の質的な活性化を目的として,教室講義,インターネット(以下,PC),携帯電話(以下,携帯)のシームレスで最適な連携方式の検討を行った.具体的には,学習者が「PC,携帯のいずれを」,「どこで」,「いつ」利用するかを詳細に履歴情報として収集し,コンテンツ配信に関するツール(PC,携帯),形式,内容,タイミングの最適な組み合わせの検討を行った.その結果,「携帯を利用する場合はコンテンツの形式・内容と利用場所には強い関係がある」との知見を得た.以上の成果や知見をもとに,「位置情報を用いた学習コンテンツの自動生成,配信」のための方法論と技術に関する検討を行った.具体的には,位置情報英語コーパス(以下,位置コーパスと呼ぶ)の作成を行い,その妥当性,有効性,実効性の検証を行った.位置コーパスの規模としては,英単語の粒度で3,000語程度(中学,高校の学習要領をカバー可能な範囲),連語の粒度で100,000語程度で行った.次のような手順で研究を推進した.(1)位置情報に関するランドマーク(駅,銀行などの行動の目標となるオブジェクト)の抽出と,位置情報を伴う英語文の書き出し.(2)(1)の英語文を構成する相対的粒度の小さい構成要素の体系的整理(位置情報に関するスクリプト知識の記述).(3)(2)の作業をスパイラルに実施し,位置情報に関する英語構成要素の階層構造を記述(位置コーパスの記述).4)位置コーパスの妥当性,有効性,実効性の検証(実証実験の実施).
 今後は,位置コーパスから英語問題の生成方式を検討し実装することが課題である.