表題番号:2004B-912 日付:2005/03/24
研究課題体温調節機構としての視交叉上核の役割の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 助教授 永島 計
研究成果概要
緒言 恒温動物には体温を一定に保つための優れたシステムが存在するが一方体温には明確な概日リズムが存在することが知られている。これは身体活動や代謝の活動により二次的に生じたものではなく積極的に調節されるものであることが申請者らの研究により明らかになってきている。
目的 研究では生物時計の最上位中枢と考えられている脳視床下部の視交差上核がいかに体温調節反応を変化させ体温のリズムを形成しているかを明らかにしていくことを目的とした。
実験1 ラットの視交叉上核を電気的に破壊し、十分な回復の後、高温(33度)、低温(18度)に暴露させこの際の体温調節を調べた。次に体内の熱産生を低下させる強い刺激である絶食をおこなった上で同様に体温の変動を測定した。
結果 視交叉上核の破壊により体温のリズムは消失するが、いずれの環境温、摂食状態においても体温は一定に保たれた。しかし非破壊ラットにおいては絶食時に体温の低下が非活動期において認められた。さらに非破壊ラットにおいては環境温度の変動に対し熱産生量を変動させ体温を調節させるのに対し、視交叉上核破壊ラットではそのような反応が減弱していた。また摂食情報の伝達には迷走神経が重要な役割を果たしていることが付随する研究で明らかになった。
実験2 時計遺伝子Cryの欠損マウスを用いてその体温の変動と熱産生の変動の関係を調べた。
結果 Cryの欠損マウスでは体温の変動は熱産生の変動に依存している。一方正常マウスでは熱産生の変動に対しても体温を一定に保つメカニズムが存在した。
結論 視交叉上核またその活動に反映する時計遺伝子は体温調節反応の制御に関わっていると考えられた。また摂食あるいは代謝の情報を視交叉上核はうけているとかんがえられ、さらに体温調節に影響をあたえていると推測される。

上記研究結果についてはAmerican Journal of Physiology、Autonomic Neuroscienceに現在投稿中である。