表題番号:2004B-905 日付:2005/03/25
研究課題20世紀の精神医学における人間観・社会観の変容に関する知識社会学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 専任講師 周藤 真也
研究成果概要
 本研究は、20世紀の精神医学において、精神病という概念によっている表象されている精神病および精神病者観、およびその背景にある人間観、社会観の変容を系譜学的に検討するものである。
 本年度は、この研究課題の中でも、特に近年の日本における精神病者観の変容について、その知的構造を知識社会学な観点から、集中的に研究を行った。
 日本においては、先頃、Schizophrenie の訳語として、「精神分裂病」という従来の語を廃棄し、「統合失調症」という語を採択し、これに置き換えつつあるのだが、それは20世紀後半のどのような知的構造の変容を象徴しているのだろうか。本研究では、この呼称変更の過程ならびに、「精神分裂病」概念の歴史的布置を確認するとともに、「精神分裂病」が「負」の意味においてではなく、「正」の意味をもっていたという歴史を取り上げることを通して、この呼称変更が、「精神病の人間学」の終焉、ならびに「人間」としての精神病者像の終焉を象徴していることを明らかにした。そして、このことは、精神病者を理解するという意味において、「人間」として見るということであるのだが、それは、こうした概念の歴史からいえば、「人間」から解放する、すなわち「人間」から排除するという意味的な値を持っていることの論証を、1960~1970年代に欧米や日本を含む西側諸国で沸き起こった反精神医学の思想との関係性により行った。そうした中で、日本においては、精神病は「疾病」概念から「障害」概念への大きな転換に見られる。1970年代以降の日本において「精神障害」という概念が、どのような過程の中で成立してきたのかということを法制度などをまじえて検討するとともに、「精神障害」という概念の広がりとその位置価とを検討してきており、その研究成果を発表するべく準備中である。