表題番号:2004B-891 日付:2011/03/07
研究課題界面特性を利用した超微粒子希薄懸濁液の迅速固液分離に関するシミュレーション的考察
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助手 所 千晴
研究成果概要
 コロイド次元の微粒子を含有する希薄懸濁液の迅速固液分離法として、繊維状のスラグウールを捕捉材に吸着除去する方法に関するシミュレーションを行なうにあたり、その基礎となる水溶液中の化学平衡計算に関する考察を行った。化学平衡計算によって、平衡状態にある溶液のpHや沈殿生成状況を把握するためには、系内に存在する全ての成分の影響を考慮する必要があり、化学種の数が多くなると計算がきわめて繁雑になるため、幾つかの工夫を行なった。
 特に希薄ヒ素の除去機構をシミュレーションにより考察したところ、希薄ヒ素はそれ自身が微粒子を形成してスラグウールに吸着しているのではなく、共存あるいは添加した鉄(III)またはアルミニウム塩が形成した水酸化鉄または水酸化アルミニウムの微粒子表面へヒ素が吸着し、ヒ素を吸着した水酸化鉄またはアルミニウムがスラグウールに吸着されることによって迅速分離されていることがわかった。
 更に本研究では、ヒ素の除去に関する共存イオンの影響に関する定量的考察も行った。ヒ素は陰イオンの形態で水溶液中に存在するため、共存イオンの中でも特に陰イオンはヒ素の除去を妨害する可能性がある。本研究では、陰イオンの中でも酸性坑廃水中に最も一般的に存在する硫酸イオンに注目し、その共存による影響を計算と実験の両面から検討した。硫酸イオンの影響は、水酸化鉄または水酸化アルミニウムへのヒ素および硫酸イオンの吸着を考慮した計算により、実験結果を良好に再現することが確認された。また、硫酸イオンはヒ素の水酸化鉄あるいは水酸化アルミニウムへの吸着を妨害し、その影響はヒ素(V)イオンよりヒ素(III)イオンの方が大きく、アルミニウム塩より鉄(III)塩の方が大きいことが確認された。