表題番号:2004B-855 日付:2007/04/26
研究課題便益性を維持した上で安全性を設計し得る製品設計プロセスの開発研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小松原 明哲
研究成果概要
不特定多数者が使用する公共設備、消費生活用品、また公園遊具等には、内包するリスクが高いものも多い。このリスクを受容できる水準にまで低減する必要がある。一方で単に安全性を高めることのみを念頭に置いたリスク低減策を講じると、往々にして使いにくく、また公園遊具等では、「つまらない遊具」になってしまうこともある。この場合には、通常の使用方法を保証した上での安全性が考えられることが望ましい。本研究では、公園遊具など、子どもが関係する製品を事例として取り上げ、以下の検討を行った。
(1)事故事例の分析:新聞記事等に報道された乳児を除く子どもに係わる事故事例を収集し、年齢別に分類し、そのときの子どもの行為の共通性を分析した。その結果、子どもの発達段階に対応して、事故に至る子どもの挙動には共通性が見られ、これは発達心理学で言うところの臨界期を反映した行為であると思われた。このことは裏返すと、臨界期に好む行為を刺激する要素が製品の中に埋め込まれていると、子どもはたやすくその行為を行ってしまい、そのときにその行為を前提とした安全性が考えられていないと事故に至ってしまうといえる。一方で、その行為を禁止、不可能化する設計対応がなされていると、子どもにとっては魅力的ではない製品となってしまう例も見られた。一方で、事故事例の中には、子どもの行為の刺激とは無関係のものも見られた。例えば滑り台に釘が出ていることや、衣服が絡む空隙があることがそうである。これらは無条件に除去すべき事故の起因源であるといえる。
(2)設計プロセスの提案:ISO12100(機械安全)に示されるリスクアセスメントのプロセスに、当該リスクが魅力等に関係するものか否かの判定を組み入れたプロセスを提案した。このプロセスにおいては、リスクが魅力等と無関係なのであれば、単なるリスク低減を図ればよく、関係しているのであれば、その魅力が損なわれない安全性が考えられるべきであることを示した。
(3)プロセスの試用:協力の得られたある住宅設備機器メーカーにおいて提案したプロセスを試用し、その有用性を検証した。