表題番号:2004B-836 日付:2005/03/17
研究課題島原天草一揆の基礎的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 専任講師 大橋 幸泰
研究成果概要
 本研究は、民衆運動と宗教戦争、両者の視点を融合した新たな島原天草一揆の歴史的意義を見出すことにより、暴力・非暴力の論理を明らかにするという壮大な目標をもっているが、単年度では実現は困難であるので、本年度は史料の所在把握と調査を中心に行った。具体的には、8月24日~27日秋月郷土館・九州大学九州文化史研究所(以上、福岡県)・山口県文書館(山口県)にて、9月13日~16日熊本大学図書館(熊本県)にて、それぞれ史料調査を行い、コニマイクロカメラおよびデジタルカメラにより写真を撮影した。
 このうち、熊本大学図書館には、財団法人永青文庫から寄託されている北岡文庫(旧熊本藩主細川家文書)があり、島原天草一揆に関する史料としてはもっとも良質のまとまった史料であると言われているが、今回の調査により同文庫が質量ともに重要であることを確認した。当然のことながら、今回1回の調査ではとても網羅的に把握することは不可能であるので、今後科研費などにより継続的に調査を行いたいと考えている。
 本年度、関連する成果としては、西村汎子編『戦争・暴力と女性1 戦の中の女たち』(吉川弘文館)に「島原天草一揆における女性」という論考を寄せた。そこでは、①中世に生み出された逃散という非暴力民衆運動の精神が、どのような回路を経て権力との武力対決を想定しない近世の惣百姓一揆に受け継がれたのかという問題をふまえて、島原天草一揆の歴史的位置を再検討すべきである、②島原天草一揆における女性は主体性・客体性両側面があって、一律にどのような参加のあり方が一般的であったと規定することは困難であるとし、一揆参加者の多様性から一揆の性格を再考すべきである、と今後の研究の方向性を示した。