表題番号:2004B-835 日付:2013/04/24
研究課題軽度発達障害児に対するグループソーシャルスキルトレーニングプログラムの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 助教授 本田 恵子
研究成果概要
(本研究の目的)
特別支援教育が始まろうとする中、普通教室における対人関係や社会性を育てるために、軽度発達障害児に対するソーシャルスキルトレーニングの必要性が唱えられている。ソーシャルスキルの発達には友達との日常的な関わりが必要であり、課題の設定に関しては、学校の教職員との連携が不可欠である。本事例は、今後の特別支援教育における支援の可能性を模索するために、小学校のリソースルームを活用し授業中に取り出し方式で1週間に1時間づつ8回のグループトレーニングを実施した事例研究である。経過と学級との連携のあり方について検討してゆく。
(参加者の特徴,募集の手続き,経過)
 低学年グループとして小学校1年生から3年生までの男女7名、及び、高学年グループとして4年生から5年生までの男女5名である。いずれも、保護者がソーシャルスキルトレーニングの必要性を感じての申し込みであるが専門相談機関で査定を受けた経験がある者は4名(言語発達の遅れ、動作性LD、PDD)であり、そのうち継続的な治療を行っている者は1名である。その他の児童は感情表現が苦手、不安定、集団活動が苦手、コミュニケーション力が不足という特徴が共通している。
プログラム実施の手続きとしては、本企画の実施を職員会議で合意後、全校の保護者に活動を広報して自主的な参加者を募集。応募者から、男女、学年を考慮してメンバーを決定した後、具体的な実施方法について担任から保護者に説明。初回活動後に保護者会を実施して活動報告及び、今後の予定を説明した。また、毎回の活動中の様子は保護者、及び担任との連絡ノートで詳細に伝え、家庭での課題や変化、学校での課題は変化を理解した上で活動内容を組んでいった。尚、事前、事後のソーシャルスキルの変化を見る参考として保護者にはSM式社会性発達検査を依頼し、担任には課題別ソーシャルスキル表へのチェックを依頼した。
プログラムは、全員での感覚統合活動後に小グループで課題活動を実施、活動後に振り返りを行うというものである。毎回、活動前、途中、活動後の「気持ち」を表情ポスターから選ぶという作業を続けてゆき、気持ちのモニタリングを行った。
 活動の結果、保護者による子ども理解が促進、教員の子どもへの介入の視点の広がり、子ども自身の関わりの変化が見られ、日常生活において、気持ちのコントロール及び向社会的行動が促進された。また、特別支援教育の実践方法が具体的に理解され、学校全体としてリソースルームの活用方法、及び、道徳の授業を活用してソーシャルスキルトレーニングを実践してゆく試みが導入されるようになった。