表題番号:2004B-823 日付:2005/03/04
研究課題冷戦期ソ連・東欧諸国における英国文化外交の諸相
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 専任講師 渡辺 愛子
研究成果概要
本課題では、冷戦期におけるイギリスの文化交流機関がソ連・東欧諸国と中心とした旧共産主義国に対してどのような文化外交を展開したのかを考察する研究の一環として、おもに対外文化政策拠点の現地調査を行った。これは、研究課題の対象地がイギリス国外であるという性質上、実際に当地に赴き、各事業所における史料の有無を確認することが不可欠であると考えたためである。

2004年9月、ロシア、ポーランド、チェコ、ハンガリーにおけるブリティッシュ・カウンシルの各事業所を訪問し、ヒヤリング調査・資料調査を行った。どの事業所も一様に英語教育、イギリスへの留学支援などに力を入れていたが、プレゼンテーションの仕方は各国がオーディエンスのニーズに応える意味で非常に個性的であり、とくに東欧3カ国に関していえば、少し前まで西側諸国から「ソ連の衛星国」とひと括りに扱われていた事実が受け入れがたかった。各事業所には、あいにく旧共産主義国時代の史料を収めたアーカイブの類は存在しなかったが、今回の訪問により、モスクワ事業所の現地スタッフ(兼イギリス大使館員)であるMelissa Cook氏より、ロシアにおける文化交流活動の現況およびそこにいたるまでの経緯について興味深い話を聞くことができた。さらにプラハでは、元カウンシル・スタッフのNora Hronkova氏へのインタビューに成功した。同氏は、1945年以降、冷戦初期の混沌とした社会情勢のなかで、チェコスロヴァキアにおける事務所の創設に直接携わった人物である。高齢の同氏から調査対象時期における生の体験を聴取することができたことは、非常に大きな収穫であった。