表題番号:2004B-821 日付:2006/04/27
研究課題善珠撰述仏典注釈書所引の漢籍に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 専任講師 河野 貴美子
研究成果概要
 善珠撰述の仏典注釈書に関する写本、版本など伝本の調査を行うとともに、それら仏典注釈書に見られる漢籍、古辞書類の引用、利用状況について整理し、検討を加えた。
 まず、善珠撰述の仏典注釈書類の伝本を所蔵する東大寺図書館、大谷大学図書館、龍谷大学学術情報センター大宮図書館、興福寺、叡山文庫等において、『成唯識論述記序釈』『因明論疏明灯抄』『唯識義灯増明記』『法苑義鏡』等の諸本を実見調査し、写真複写を作成した。これらの諸本は、大正新脩大蔵経等に翻刻されているものであるが、写本の実見調査を通じ、特に反切注記など、一つ一つの文字の伝写が問題となる部分を確認することにより、奈良末・平安初期当時に善珠が拠ったであろう漢籍、古辞書等のテキストの姿を復原するべく考察を進めた。また、写本に加えられている裏書や傍記から、古代日本における漢文知識、あるいは伝写の過程上、各おのの時代においていかなる漢籍、古辞書類が利用、参照されたのかを推定できる手がかりを得た。
 そして、如上の調査、考察の結果を、「善珠撰『因明論疏明灯抄』の反切」(第1回日本言語文化研究国際フォーラム 於中国大連大学2004年7月23日~25日)、「善珠撰述仏典注釈書における老荘関係書の引用」(道教と日本文化国際シンポジウム 於中国浙江工商大学 2004年11月5日~6日)、「日本古代の仏典注釈書に見る音釈」(日中比較研究国際シンポジウム 於中国廈門大学 2004年12月1日~4日)、「平安末期における善珠撰述仏典注釈書の継承」(早稲田中世の会 2005年3月19日)として発表した。また、口頭発表の内容を論文としてまとめ、雑誌や論文集等に掲載、あるいは投稿している。
今後もその他の伝本の調査や、後世における善珠の学問の受容も含め研究を継続したい。