表題番号:2004B-817 日付:2007/11/19
研究課題現代中国文化の潮流と中国同時代文学
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 千野 拓政
研究成果概要
 同時代の中国文学・文化に関する中文資料、および中国同時代文学を考察する際に重要な参照系となる文学理論・映画・サブカルチャー関係の資料について収集し、本研究助成をその費用の一部に当てた。
 また、9月に台湾で、10月~11月に上海で現地調査を実施し、図書館や書店その他で資料収集を進めたほか、現地の現代文学研究者、カルチュラルスタディーズ研究者と交流し、意見を交換した。
今年度に進展をみた成果については、学会での口頭発表・講演・論文などの形で公表した。
 本年度進展をみた究成果の内容は以下のとおり。
①1990年代以降、東アジアの各都市の若者の消費生活、文化的生活が共通化しつつあることを各種資料から指摘した。
②それだけに止まらず、金属バット事件に類似する親殺し、学級崩壊などの事件が共通に起こっていること、文学芸術作品でも、東電OL事件を彷彿させるようなきわめてよく似た小説、閉塞感を抱いて活きる若者を描くきわめてよく似た映画などが、日本、中国、台湾などで共通して生み出されていること、さらに欧米でも同じ現象が共通に起こっていることを、各種資料から指摘した。
③アジアの若者文化が共通化している傾向は、日本でも、中国その他のアジア地域でもグローバリゼーションの影響として語られることが多い。その背景となっているのは、ウォーラーステインの世界システム論である。だが、同じ世界システム論でも、フランクの立場を参照すれば、違った見方が可能になる。②にあげた、精神的な問題が共通して発生している現象は、そうした視点の必要性を物語っているということを、各種資料をもとに指摘した。
④その上で、上記のような現象は、19世紀にそれまでの文化システムが大きく転換することによって誕生した近代の文化システムが、現在再び大きな転換点を迎えていることを物語っている、という仮説を各資料に基づいて展開した。