表題番号:2004B-803 日付:2010/05/06
研究課題イラク問題と日欧政治関係―故・奥克彦大使の足跡をたどって
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 助教授 中村 英俊
研究成果概要
本研究は、2003年11月29日にイラクで亡くなった奥克彦大使の足跡をたどりながら、「イラク問題と日欧政治関係」というテーマに取り組むことを目的とした。2004年度の成果として、以下の3点で研究が進展した。
 第1に、2003年11月2日の日本EU学会での報告に基づいて、EUの対イラク政策を事例に「民生パワー」(civilian power)概念の再検討を試みた論文が公刊された。
 第2に、2004年5月14日の早稲田政治学会において「イラク問題と日米欧のテロ対策」という報告を行う機会を得た。この報告に基づいた論文を公刊する予定である。
 第3に、「イラク問題と日欧政治関係」というテーマに沿って、故・奥克彦大使の足跡をたどるための研究調査を実施した。その文脈で、次の2点で教育上の成果を得ることができた。①2001年12月の日・EU定期首脳協議に合わせて「日・EU協力のための行動計画」を完成させる過程で、奥大使が特に国際経済第一課長として重要な役割を果たした。2004年6月25日には、私が担当するオープン教育センター設置科目「EUと日本の政治関係」において、下川眞樹太氏(当時・国際経済第一課長)をゲスト講師として招聘した。②イラクで亡くなった奥大使の意思を引き継ぐ基金を発足させた関係者とともに、2005年度以降「国際協力の実践と理論:奥・井ノ上イラク子ども基金連携講座」というオムニバス科目をオープン教育センターに設置して、私がそのコーディネートに当たることになった。
 奥大使は、2003年3月のイラク戦争「後」の人道復興支援活動の道半ばで凶弾に倒れた。「イラク戦争」が必ずしも「対テロ戦争」と相容れないものであったことに鑑みると、アメリカ外交政策の文脈でのみ議論されがちな「イラク問題」を「日欧政治関係」の文脈でも考察することの意義は学術的にも大きいといえよう。今後とも、研究を続けたい。