表題番号:2004B-204 日付:2005/03/14
研究課題超高密度不揮発性ナノメモリーの提案
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 堀越 佳治
(連携研究者) 理工学術院 助手 小野満 恒二
研究成果概要
【はじめに】
ペロブスカイト系Mn酸化物の、PrCaMnOは、パルス電圧を印加すると、抵抗を大きく変化させるコロサル型磁気抵抗効果(CMR効果)を発現することで知られている。特に、パルス印加方向を逆転させると、抵抗値が振動し、また可逆性に優れているため、RRAM材料として注目を集めている。また、このCMR効果は、結晶を薄膜にすることで、発現する温度(Tc)の向上が見込まれ、今回スパッタ法によりサファイア基板上にPrCaMnO結晶を成膜した。また、同時に、Si基板、ガラス基板、金属基板上への成長を見込み、スパッタプロセスで作成可能なバッファー層として期待されるGa2O3の探索も行った。
【マグネトロンスパッタ法で作製したGa2O3薄膜】
酸化物半導体β-Ga2O3単結晶は固有な性質として約5.0eVと大きいバンドギャップを持ち、酸素欠陥による導電性を示すことから、従来の半導体にない極紫外光に透明な導電性薄膜や新しいデバイスへの応用が期待されている。単結晶はこの優れた特性にもかかわらず容易壁開性、大きい導電率の異方性を持つことから、応用面の開発には薄膜堆積技術の進展が不可欠である。今回我々は、サファイア基板上に、マグネトロンスパッタ法を用いてGa2O3薄膜を成長した。XRD測定から、基板温度の増加とともに、アモルファスから多結晶β-Ga2O3へと変化した。サファイア基板を用いた場合、基板温度を360度以上とした場合、(-201)配向したβ-Ga2O3 薄膜が成長することがわかった。図1に、成長時の基板温度を変化させた時の室温で測定したカソードルミネッセンススペクトルを示す。アモルファスでは発光は観察されなかったが、多結晶β-Ga2O3ではグリーン発光をしていることがわかった。
【スパッタ法によって作製したPrCaMnO結晶の室温CMR効果】
今回実験に用いた試料は、サファイア基板上に成長温度410度で200nm成膜した。この結晶をカソードルミネッセンス(CL)測定したところ、1.89eVおよび3.77eV付近に発光ピークを確認した。この結晶表面に、Au電極を0.5mm間隔で蒸着し、電極間に30V、10msのパルス電圧を印加した際の抵抗の変化を調べた。その結果、抵抗値の変化は可逆ではあるものの、印加方向、印加回数によらずランダムに変化した。これは、電極の面積が大きいため、印加パルスにより、相転移が様々な領域で発生し、パルスによる抵抗制御が不完全となったためと考えられる。今後、電極の形状、材料の選択により、安定したCMR効果の発現を目指す。