表題番号:2004B-120 日付:2010/05/18
研究課題欧州における住宅・住環境政策における政策主体の役割変化に関する国際比較
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 教授 早田 宰
研究成果概要
 政府役割の「プロバイダーからイネイブラー」への変化を受けて、欧州における住宅政策においては「社会住宅の直接供給から間接供給へ」、住環境整備政策においては「行政主導の再開発から民間活力を活かした都市再生へ」の流れが顕著である。イギリスの調査とEU地域他国との比較をおこなった。

 集中的なケーススタディとしてイギリス・モデルをとりあげた。ブレア労働党政権下におけるパートナーシップ(協働)による住宅・コミュニティ再生における主体の役割変化について分析した。
具体的には、住宅政策における大規模公営住宅の自主的移管(LSVT)および、住環境整備政策における統合都市再生補助制度(SRB)をとりあげた。前者は、バーミンガムのキャッスルベール地区の分析を、後者は、スパークヒル、スパークブルック&タイズリー地区の分析をおこなった。

 いずれの地区も、市民主体のまちづくりを支援するまちづくり会社組織が重要な担い手となっていた。中世の救貧院以来の系譜をもつハウジングアソシエーション(HA)が、登録社会住宅供給体(RSL)として現代的で多様な活動、公営住宅の居住者への売却(Right to Buy)、公営住宅のHAへの移管、ハウジングアソシエーション住宅の居住者への売却(Right to Acquire)などの多様な住宅ミックスへの移行の支援、さらに、若者自立支援、地域における雇用支援、緊急一次保護政策にアウトリーチして総合的な地域再生の体系を実現する主体として登場し、確立されつつあることがわかった。ただしHAの数自体は減少しており統合拡大化が進んでいることがわかった。
イギリス、フランス、ドイツ、スペインの傾向をEUの都市政策(URBAN)などの共通基盤をベースに比較した。EUの中ではイギリスがもっとも社会住宅の民間移管に積極的であるといえるが、他国も米英に追随する動きが出ていることがわかった。