表題番号:2004B-119 日付:2005/11/21
研究課題移行国の農業発展と政府の役割に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 教授 弦間 正彦
研究成果概要

 途上国や移行国においては現在でも、そして先進国の仲間入りを果たした日本においては過去の発展の過程で、農業や農村の果たす経済・社会的重要性は大きいし、また大きかった。そして、これらの分野には、多くの公的資金が投入され、各種支援政策が適用されてきている。しかし、投入された公的資金の経済的・社会的効果については、それが援助関連のプロジェクト・プログラムに関連している場合には、個別に事前・事後において検証する努力がなされてはいるが、評価の実施はまだ体系だったものにはなっていない。本研究は、農業・農村を取り巻く経済・社会環境が急速に変化してきている途上国を対象として、農業・農村に対する公的資金投入の経済的・社会的効果について分析し、今後のこの分野に対する政府の取り組み方に関する政策的含意を導入することを目的として実施された。
 ポーランドを事例とした時系列データ(1991年から2003年)の統計分析から、体制移行後の農業・農村分野に対する公的資金配分、教育プログラムに対する予算配分、科学技術振興のための予算配分はそれぞれ農業部門の付加価値を改善するのに役立ってきており、またこのことが体制移行後の農村の生活の質向上に役立ってきていることが確認された。特に科学技術振興のための予算配分の貢献が大きかったことが分かった。この結果より、体制移行後の農業・農村に対する移行国政府の取り組みは効果を生み出してきており、今後も同様な努力が積み重ねられることが望ましいことが政策的含意として導入された。