表題番号:2004B-001 日付:2005/03/26
研究課題一般レベルの正則ヤコビ形式に対する跡公式の構成とコーネン・ザギヤの公式の一般化
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 坂田 裕
研究成果概要
 本研究課題である正則ヤコビ形式に対する跡公式について、レベルに直接作用する Atkin-Lehner 作用素を定義し、その後で Hecke 作用素とそれとの結合作用素に関する跡公式を Skoruppa-Zagier および Hijikata-Yamauchi-Miyake それぞれの手法を統合的に用いて直接計算した。その結果、指数1を持つ素数レベルの正則ヤコビ形式の場合におけるそれは、素数指数を持つレベル1の正則ヤコビ形式のそれとほぼ一致することを確かめ、elliptic 保型形式や Siegel 保型形式の跡公式とは構造が多少異なることを見つけた(ただし、一部の term の計算および ウエイトの低い場合についての計算については現在も計算中である)。また、一般レベルの正則ヤコビ形式の場合における跡公式も同様に計算できるが、それは非常に複雑なものになることも判明した。これについては、レベルに作用する Atkin-Lehner 作用素と指数に作用する Atkin-Lehner 作用素を別々に考えて,それら全ての同時固有な Hecke eigen form で張られる空間上の跡公式に限った場合には綺麗な関係式があることが予想できる(これは,素数レベルの場合の跡公式や志村-新谷対応で対応する elliptic 保型形式の空間の構造からある程度確証を持つことができた)ものの,2次形式の還元理論のさらなる精密化や(組み合わせ論的手法による)跡公式が一致する部分空間の構成などの技術的問題が未だ完全には解決出来ておらず,現在その証明に向けてさらなる研究を行っている。
 次にコーネン・ザギヤの公式の一般化についてであるが、跡公式の完成に合わせて興味深い1つのある結果を得ることができた。それは,異なる2つのヤコビ形式の Fourier 係数の間の関係式であり,今後様々な応用があるものと期待できる。
 以上これらの結果については,まとまり次第順次発表していく予定である。
 最後に,本研究課題をサポートする目的で,'(正則ヤコビ形式と密接な関係にある)半整数ウエイトの保型形式を決定するために必要な条件の構成問題’についても精力的に研究を行い,具体的な条件を与えることができたことを付け加えておく(これについては論文としてまとめて投稿すると同時に2004年度日本数学会秋季学会などでも発表を行った)。