表題番号:2004A-379 日付:2005/03/18
研究課題年間COPを考慮した低温熱源利用可能な高性能アンモニア吸収冷凍機の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助教授 天野 嘉春
(連携研究者) 理工学総合研究センター 客員教授(専任扱い) 武居 俊孝
(連携研究者) 理工学総合研究センター 助手 竹下 恵介
研究成果概要
 排熱駆動可能な冷熱源機器として、吸収式の冷凍機がある。主に空調用には3~7[°C]程度までの冷水を出力可能な臭化リチウム式が一般的に広く普及している。しかし、臭化リチウムによる吸収式冷凍機は冷媒を水とすることにより、一般には氷点下以下の出力を得ることはできないため、氷蓄熱などの用途には適用できない欠点がある。一方、アンモニアを冷媒とし水を吸収剤とするアンモニア吸収式冷凍機は、-60[°C]程度の低温を出力可能である利点を持つが、一部10[kW]程度の小型機も空調用として発売されてはいるものの、大部分は大型の冷凍装置としての需要に対応した製品として開発されてきた。また、低温を出力するために、熱力学的な意味での代償として、駆動熱源の温度を低下させることが困難であった。特に、冷媒濃度を高めることが効率向上に不可欠であるとする常識的なとらえ方から離れて、あえて冷媒のアンモニア純度をある程度犠牲にしても、ブリードサイクルの容量アップや乾式の蒸発器を採用することにより、溶液サイクルにおける濃度幅(濃溶液と希溶液とのアンモニア濃度差)の低下を極力抑えて精留熱を大幅に低下させ、これにより精留機能を実現する精留塔の大幅な小型化とリフラックスサイクルの削除を可能にするサイクルを提案した。
 提案サイクルの実現可能性を調査するために、現有のアンモニア吸収式冷凍機を用いて、蒸発温度を操作して冷媒濃度を変更し、サイクル内各部における状態量変化の詳細な調査をおこなった。その結果、乾式の蒸発器を採用し、蒸発器周りの構成要素を変更することで提案サイクルによって再生器出口における熱源温度を設計点より10[°C]程度低下させても運転が十分可能であることを確認した。同時に、乾式の蒸発器を採用する利点と、冷媒濃度変化が凝縮圧力に及ぼす影響を、プレート式熱交換器を使用した場合について、実験によって整理した。
 また、サイクル内の過渡的な状態量変化の調査を、吸収器周りについて詳細に行った結果、起動時にみられる吸収器内での溶液濃度の過渡的な変化に起因するポンプ異常のメカニズムを解明した。