表題番号:2004A-377 日付:2005/03/15
研究課題高放射線場における高分子の反応解析とメゾ・ミクロスコーピック変化の系統的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 濱  義昌
(連携研究者) 理工学術院 教授 大木 義路
(連携研究者) 理工学術院 教授 鷲尾 方一
(連携研究者) 理工学総合研究センター 客員講師(専任扱い) 岡 壽崇
研究成果概要
 高分子物質に高エネルギー放射線を照射した時の構造変化を色々な面から検討した。ポリエチレンへの重イオン照射時のイオン飛跡に沿った局所的な反応過程において,イオンの阻止能に依存する反応過程を見出した。イオンの阻止能はその速度によって大きく変化するのが特徴である。特に,ブラックピーク近傍においては非常に大きな変化を示す。ポリエチレンイオンにおいては照射によって起こる構造変化はトランスビニレン,末端ビニルが主なものであるが,前者は特に顕著である。しかし,これらの深さ方向への生成割合は阻止能に依存し,その依存性はそれぞれ異なっていることを見出すことが出来た。特に末端ビニルにおいてはブラックピーク近傍において,その生成確率が増大する。これはイオンの速度が減少し阻止能が増大することによって,局所的に付与されるエネルギーの増大によって主鎖切断反応の割合が著しく増大するためである。このような反応過程は低阻止能を有する電子線,ガンマ線ではこれまで見出されてこなかったものである。これは局所的な高エネルギー付与により引き起こされる特異な反応過程である。
 このほか本研究においてはポリプロピレンの表面にシリカコーティングを施すことによって,放射線酸化劣化を著しく低減出来ることを見出した。これによって高機能性を持った新しいフィルムの製作が可能となろう。