表題番号:2004A-327 日付:2005/02/22
研究課題P2P技術によるオーバレイネットワークの実現とセキュアなコラボレーション構築技術
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 大学院情報生産システム研究科 教授 小柳 惠一
研究成果概要
インターネット上でPeer-to-Peer(以降P2Pと呼ぶ)ネットワークを利用した、GnutellaやFreenetなどのファイル共有アプリケーションの人気が高まっている.これらはファイルサーバなどを利用してコンテンツの集中的な管理を行わず、ネットワークに参加しているユーザがコンテンツを分散して管理し、他のユーザはコンテンツ発見のための検索クエリをユーザ間で互いに通信し合いながら転送することでファイルを発見・取得する.近年では、ファイル共有アプリケーション以外にも、GrooveやSkypeなど、様々な種類のアプリケーションが提案されている.Groove は、ワークスペースと呼ばれるセキュアな協調作業空間をユーザ間で共有し、スケジュール管理、メッセージングまたは掲示板などの非同期的な作業を可能にするグループウェアとして、企業などへの導入が進んでいる.また、skype は、ユーザ同士で音声通話やチャットなどの同期的なコミュニケーションを可能にするコミュニケーションツールとして個人を対象に多くのユーザが利用している.これらの仕組みはシステムごとに異なるが、ユーザ間で直接通信して協調作業を行うという点で、従来のサーバを介したシステムと異なっている.また、これらのシステムは、ユーザの実ネットワークにFirewall やNAT などが存在する場合でも、アプリケーションレベルでネットワークを構築することにより、他のネットワークのユーザと相互通信をすることが可能になる.これにより、ユーザは、実ネットワークの形態を意識することなく、協調作業を行うことができるようになる.このように実ネットワークを意識しないネットワークサービスやネットワークアプリケーションは今後も増えると考えられ、システム側がより複雑化するネットワークやより高度化するユーザの要求へ対応する必要がある.一方、筆者はProject JXTAにおいて、完全分散型の情報共有プラットフォームであるJXCube(Jxta eXstreme Cube)を提案している. JXCube を利用することで、セキュアな環境でスケジュール管理、ファイル共有そして分散開発などの非同期型協調作業アプリケーションおよびチャット、音声通話、映像会議、オンラインゲームなどの同期型協調作業アプリケーションを開発することが可能になる.JXCube などの分散ネットワーク上でチャット、音声通話、映像会議そしてオンラインゲームなどの同期型の協調作業を行う場合、データの同期、一貫性、遅延差そして順序付けなどを解決しなければならない場合がある.本研究では、P2P ネットワーク上において、複数人のユーザが同期型の協調作業を行う場合に、データの同期、一貫性、遅延差そして順序付けなどを解決するための調停ノードを動的に決定および再配置する技術を明確にしている。