表題番号:2004A-321 日付:2005/04/28
研究課題次世代イーサネットを想定した薄膜水晶振動子の基盤技術開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 大学院情報生産システム研究科 教授 植田 敏嗣
研究成果概要
高速のコンピュータネットワークの通信手段としての10Gbpsの高速イーサネットは通信・放送の垣根を越えて今後幅広く需要が高まってくる事が予想されている。同時に、電子部品の小型化への要求に答えるには、振動子のより精密な加工が必要である。本研究では、高精度水晶加工技術を基に、10Gbpsで要求される基準クロックの622MHz以上を狙った電圧制御型水晶発振器(VCXO)に使われる水晶振動子・発振回路・実装・測定などの基礎技術を開発することにより、今後の高速ネットワークで要求されるハード面の主要部品の技術を研究開発することを目的としている。本研究では、以下の研究開発を実施した。

①電極構造の検討
 従来のVCXOでは密着電極構造をもち、電極質量の影響は比較的に小さい。例えば、16.7MHzの振動子において、電極(50nmCr+50nmAu)の共振周波数への影響は0.5%であるが、高周波の622MHzの振動子では、同一の電極の影響は18.65%にもなる。このような場合、電極質量効果の影響を小さくするために、新しい電極構造、例えば、フローティング電極などが必要になっている。
②スプリアスの影響の除去
 これまでのATカット振動子は、機械加工によるため、寸法形状は数mm程度の大きさが必要であった。この場合に、スプリアス振動の影響は大きく、振動子の形状寸法精度を精密(μm程度)に管理する必要があった。しかし、今回提案しているエッチング加工による振動子の場合、小形の振動子を加工することが容易であるため、スプリアスを避けるための形状寸法精度を厳格に管理する必要のない振動子設計が可能である。
③エッチング加工を行うための振動子形状の設計
 振動子の形状は水晶のエッチング異方性を考え、設計した。結晶軸との回転角度によって、振動子のエッチングされた断面形状が異なる。これまでの研究成果よりウェットエッチングされた振動子の断面形状を予測し、最適な角度(ウエハ内での最適な振動配置と形状)を見付けた。すなわち、光軸に対して60°、120°の角度を持つ面で囲まれた振動子は加工精度が最適であった。