表題番号:2004A-309 日付:2006/03/27
研究課題多部位脳波測定による前部帯状回の行動モニタリング機能と性格特性との関連性の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 専任講師 正木 宏明
研究成果概要
2004A-309
多部位脳波測定による前部帯状回の行動モニタリング機能と性格特性との関連性の解明

近年,行動をモニタする脳領野として,前部帯状回機能が注目を浴びている.行動モニタリング機能は,事象関連電位ではエラー関連陰性電位(error-related negativity: 以下ERN)によって検討できる.本研究では,ERNに着目し,未だ不明確なERNと性格特性との関係を調べ,社会的成熟性,特性・状態不安,外向・内向,神経症傾向,回帰性といった特性が,前部帯状回の活動にどのように反映されるかについて検討した.また,情動-動機づけ処理の文脈からの検討と,スポーツ選手に特有の帯状回の振る舞いについての検討も行った.
実験1:刺激-反応コンパチビリティ課題の中から,空間ストループ課題を用いた.注視点の上下いずれかに呈示される矢印刺激に対して,呈示位置を無視して,矢印の示す方向に反応する課題であった.課題条件として,エラー反応に対して罰刺激(ノイズ)を呈示する条件と,罰を与えない条件を設定した.被験者は長距離走を専門とする健常大学生であった.性格測定用の各種心理テストを用いて,上記性格傾向を調べた.また,100mを規定ペースで走らせたときの走時間と目標値との誤差時間を算出した.実験の結果,ERN振幅は,誠実性得点および実走誤差との間に負の相関があった.また,罰付加に伴い,振幅値が低下する結果が得られた.
実験2:Gehring & Willoughby (2002)型のギャンブル課題を用いて,結果の知識に先行するSPNと損失結果に伴うMFN(medial frontal negativity,ERNと同義の電位成分)の振幅値に,被験者(健常大学生)のパーソナリティ特性が反映されるかについて検討した.被験者が金額を選択した2.5秒後に,報酬・損失に関する結果が呈示された.Y-G性格検査,MPI検査,sensational seeking scale,CPI,PANAS,STAIで得られた各項目の得点と,ERP振幅値との間で相関係数を算出した.その結果,全般的に,SPNにもMFNにもパーソナリティの個人差が反映される結果は得られなかった.その一方で,MFNとSPNとの間には対応関係があり,両者共に行動レベルとは乖離した情動-動機づけ処理を反映することが明らかになった.さらに,SPN振幅には,ギャンブラーの誤謬が反映されることも示唆された.