表題番号:2004A-306 日付:2005/03/24
研究課題地域スポーツシステムの構築に向けた場のマネジメントとその効果
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 専任講師 作野 誠一
研究成果概要
 新たな地域スポーツシステムとして期待される「総合型地域スポーツクラブ」をめぐる諸研究は、主として事業・組織などクラブの表面的な変化に関心を向けてきたが、「集団から組織へ」というクラブの変化に伴う内的変化(合意形成のプロセスや組織的意思決定の方法など)を照射した研究はこれまでほとんどみられなかった。本研究では、企業経営学から生まれたパラダイムである場のマネジメント論に依拠し、これを地域スポーツクラブの創設過程における合意形成、意思決定という具体的な事象に適用しながら、クラブづくりにおける有用性及び場のマネジャーの役割について検討した。
 場のマネジメント論は、従来、経営理論の主流を占めてきた経営組織や経営システムなど、目に見える「構造」に関する議論だけでは経営現象の理解は不十分であり、むしろ目に見えない「意思決定」や「心理的エネルギー」など、経営の「プロセス」に関する部分に対して経営の手段がどのように働きかけるかを問う必要性について主張するものである。本研究では、まず場のマネジメント論に関する先行文献の整理を通じて、分析枠組と分析視点を明らかにした。ついで、実際にクラブを設立した事例を取り上げ、議事録(設立準備委員会)等の書誌データの内容分析及び面接調査の結果をもとに、合意形成に至るまでの場のマネジメントについて綿密なケース分析をおこなった。これらの分析を通じて、メンバーによる話し合いと発言の機会をかなり意識的に確保していたこと、個々の意見を聞いたうえで全体としての結論に至ること、議事の適切な修正がなされていること、会議の連続性・積み上げが大切にされていること(議事録、課題提示)などの特徴が明らかになった。これらは、会議(情報的相互作用)を開催する側の「議論」の捉え方、「意思決定」「合意形成」に対する考え方の反映であり、意思決定や心理的エネルギーにも大きく影響しているものと思われる。