表題番号:2004A-305
日付:2005/03/02
研究課題多民族共生社会における身体文化の貢献に関する研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | スポーツ科学学術院 | 専任講師 | 石井 昌幸 |
- 研究成果概要
- 表題のテーマに関して、サッカーを中心にイングランドとインドの状況についての基礎的な調査(文献による研究と聞き取り調査)をおこなった。まず、イングランドについてであるが、2大マイノリティーたるカリブ系移民およびその子孫と、南アジア系移民およびその子孫とを対比した場合、カリブ系はイングランドのプロ・サッカー・リーグであるプレミア・リーグに数多くの選手を輩出し、またアマチュア・レベルにおいてもサッカーへの参加が盛んであるのに対して、南アジア系においては、現在のところプレミア・リーグへの選手としての進出は見られず、アマチュア・レベルにおいても、積極的な参加が見られないことが明らかとなった。また、サッカー・スタジアムにおける観戦者についても、こうした差異は見られた。このような状況は、ホスト社会(イングランドの白人社会)への同化状況とも基本的には符合している。原因としては、カリブ系がもともとキリスト教徒で英語を話すのに対して、インド系は宗教と言語の両面において、また親族関係においても、本国との絆を非常に強く残していること(そのために通婚率も非常に低い)などが想定できた。また、インド系においては、教育を媒介としての社会的上昇に対する親の関心が非常に高く、これに比してスポーツに対する関心が相対的に低いという状況も見られた。
次に、それではインド本国において、サッカーはどのような発展状況にあるのかを調査した。まず、インドにおけるサッカー文化は非常に局地的なものであって、カルカッタとゴアがその2大拠点であり、特にカルカッタは歴史的に見てもインド・サッカーの中心地であることが判った。カルカッタにはいくつかの強豪サッカー・クラブがあり、そのうちの主要なクラブの歴史は19世紀末から20世紀初頭にさかのぼる。モハン・バガン、モハメダン・スポーティング、カルカッタ・クラブ、イースト・ベンガルなどがそれであるが、これらのクラブは、カルカッタ市内にあるモイダーン公園内にすべてが所在している。モイダーン公園は、カルカッタのフーグリ河河畔にある広大な公園で、かつてはイギリス軍の演習場であった。ここに、国内を代表し、インド代表選手を輩出するクラブのほとんどが、隣接してクラブ・ハウスとホーム・グラウンドを持っているのである。そこで、ここにおいてクラブの成立史に関わる調査と、クラブ役員へのインタヴューを行った。こうしたクラブを取り巻く人びとのなかでは、サッカーに対する関心は非常に高く、またその強化への熱意も強い。さらにインドへのサッカーの受容はアジアで最も古いのであるが、しかしインドにおけるサッカー文化は、カルカッタのモイダーン公園という非常に限られた場所に限定されたものであることが判った。