表題番号:2004A-301 日付:2005/03/24
研究課題低酸素トレーニングの効果における個人差の成因となる遺伝子多型に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 村岡  功
研究成果概要
 高地環境に滞在してトレーニングは低地や平地で行う”リビングハイ・トレーニングロウ(LHTL)”法は、新しい高地トレーニング法として注目されるようになっている。また、この種のトレーニングは主に持久的能力を向上させると考えられてきたが、最近では短距離種目への適用についても検討されるようになってきている。われわれはこのことにいち早く注目し、一昨年には、陸上競技短距離選手を対象とした7日間のLHTLの影響を検討した。その結果、30秒間超最大運動時のパフォーマンスが有意に向上することを観察している。しかしながら、さらに滞在期間を短縮した場合の効果については不明であることから、本研究では、水泳短距離選手を対象として3日間のLHTLの影響を検討することとした。
 被験者は水泳競技短距離種目を専門とする男子大学生9名であった。被験者を酸素濃度15.4%の低酸素室に1日10時間、3日間に亘って滞在させる一方で、トレーニングは平地のプールで行わせた。滞在前と滞在1泊後にエリスロポエチン(EPO)濃度を、3日間の滞在前後に急性低酸素換気応答(HVR)の測定とパフォーマンステストを実施した。パフォーマンステストは30秒間の超最大自転車運動とし、運動時のピークパワー、平均パワーおよび最大酸素負債量を測定した。その結果、1日の低酸素室滞在によりEPO濃度は有意に上昇した。一方、滞在前後でのHVRに有意な変化はみられなかった。また、パフォーマンステスト時のピークパワー、平均パワーおよび最大酸素負債量にも有意な変化はみられなかった。これらの結果は、水泳短距離選手を対象とした3日間の短期間LHTLでは、パフォーマンスに対して効果的に作用する可能性は低いことを示唆するものである。なお、今回、助成費が50万円であったため、科研費(500万円)の申請で予定した個人差の成因となる遺伝子多型の解析を行うことはできなかったが、今後、この点に関する取り組みが必要であるように思われる。

キーワード:リビングハイ・トレーニングロウ、エリスロポエチン、水泳短距離選手