表題番号:2004A-298 日付:2005/03/24
研究課題高強度・間欠的トレーニングがローイング・パフォーマンスとその規定因子に及ぼす影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 樋口  満
(連携研究者) スポーツ科学学術院 助教授 川上 泰雄
(連携研究者) スポーツ科学学術院 教授 坂本 静男
研究成果概要
ボート競技とは、全身の筋力・持久力を必要とするミドルパワー系競技であり、その競技時間が2000mレースの場合、世界的なトップレベルの選手で数分~数十分にわたることから、これまでのローイング・トレーニングの多くは、持久力強化を目的とした有酸素性トレーニングが主であった。一方、数十秒の高強度ローイングもトレーニングとして行われてきたが、インターバルが比較的長いトレーニングであった。

スピードスケート選手が取り入れてきた高強度・間欠的トレーニングは、ミドルパワー系パフォーマンスの要因である有酸素性と無酸素性の能力を向上させることが知られている。

 本研究では、このスピードスケートのトレーニング法がローイングにも適応できるかどうかを明らかにすることを目的として、短期間の高強度・間欠的トレーニングが、生体内の生理学的指標に影響を与え、持久性能力要素(VO2など)を向上させることで、ローイング・パフォーマンスの向上に有効なのではないかという仮説を立てて、6週間に及ぶ断続的な高強度・間欠的トレーニング(週3回)を実施し、エルゴメータによるローイング・パフォーマンスや生理学的指標に与える影響、トレーニング最中・直後の生化学的状態を観察した。本研究で行った『高強度・間欠的トレーニング』とは、(ローイング・エルゴメータによる20秒間の全力漕ぎ+10秒間のインターバル)×8セットという、計230秒のトレーニングである。
 被験者は早稲田大学漕艇部員18名(男:12名、女:6名)で、男子6名・女子3名ずつになるようにトレーニング群(T-群)とコントロール群(C-群)とに無作為に振り分けた。T-群には、計17回(6週間)の高強度・間欠的トレーニングを行ってもらった。C-群には、T-群が高強度・間欠的トレーニングで消費するのと同程度のエネルギーをローイングエルゴメータによる有酸素運動で消費してもらった。
 その結果、①6週間のトレーニング期間を前期・中期・後期に分類した上で、それぞれの期間におけるT-群のトレーニング時の運動量(W)を比較したところ、後期の運動量は前期・中期に比べて有意に高かった。②トレーニング期間前後に行ったT-群のVO2max測定において、トレーニング後の乳酸値は、トレーニング前に比べて有意に高かった。③トレーニング後の2000mの記録の1500m~2000m区間のラップタイムにおいて、T-群はC-群に比べて有意に好タイムを記録した。
 6週間に及ぶ高強度・間欠的トレーニングによって、潜在能力のより多くを出し切ることが助長され、ローイング・パフォーマンスに有酸素性・無酸素性いずれについても正の影響を与える可能性が示唆された。