表題番号:2004A-295 日付:2008/10/29
研究課題手足の動作協調に関わる神経機構の解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 彼末 一之
研究成果概要
 協調運動とは、多関節または多肢を時間的・空間的にある目的に従って制御することを要求される運動である。拍手や歩行、ドラム演奏など、我々の周囲には協調運動が多様に存在し、運動の難易度もまた様々である。本研究では、四肢による協調運動を解析した。
 被験者は、立津の実験と同じ健常な男性4名、女性4名の計8名である(年齢は20~53歳)。被験者は台上に仰臥位になり、ポテンショメーターにて回転角度を測定できるレバーに対して手と足を固定した。4種の四肢の運動パターンをタスクとして設定した。(a)jump:四肢全てを同時に同方向に動かす。(b)pace:左右の同側肢は同位相、上肢・下肢は逆位相に動かす。(c)bound:左右の同側肢は逆位相、上肢・下肢は同位相に動かす。(d)trot:同側肢も上肢・下肢も共に逆位相(対側肢が同位相)に動かす。同位相とは各肢を同時に同方向に、逆位相とは各肢を同時に逆方向に動かすことを意味する。被験者は1Hzの周期で8種のタスクを10秒間ずつ全て行った。さらに周期を段階的に速くして、8つのタスクを5段階の周期(1、1.6、2、2.5、3.3Hz)で行った。この時タスクの順番はランダムにした。被験者にはメトロノーム音に同期するように、さらに無理に力を入れる必要はないができる範囲で可能な限り手・足を屈曲・伸展するように指示した。
 本研究ではあるタスクで四肢の運動パターンを構成する6種の組み合わせの相互相関値の絶対値が全て0.75以上の場合にそのタスクができたと設定した。すると、jump→pace→bound→trotの順でパフォーマンスが低下した。同側肢が同位相であるjumpやpaceより同側肢が逆位相であるboundやtrotでパフォーマンスが低いことは、二肢でも同側肢の逆位相で最もパフォーマンスが低いことと合致する。ヒトのパフォーマンスには方向性が強く影響するのである。