表題番号:2004A-278 日付:2006/10/12
研究課題乳幼児の生活場面移行とそれにともなう行動調整
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 根ケ山 光一
(連携研究者) 人間科学学術院 助手 河原紀子
研究成果概要
研究費の額を考慮し,保育園・家庭の縦断的観察という研究の構想を,保育園での縦断観察と家庭・保育園での1回のみの比較観察に切り替えて実施した。
0~1歳群5名,2~3歳群7名,合計12名の子どもを対象に,3か月に1回,「食」「着脱衣」「排泄」「睡眠」 の各場面を含む約3時間の保育園における生活場面の観察を行った。(家庭は1事例のみ3時間程度の観察データを収集した。)
子どもの「食」「着脱衣」行動におけるおおよその自立プロセスとその発達過程で生じる子どもとおとなの葛藤・対立についての予備的分析を行った。その結果,まず,食行動における子どもの自立のプロセスは,9か月から1歳ごろまでは食べさせてもらうか手づかみが中心であるが,1歳3か月からスプーンやフォークを使い始め,2歳以降はほぼ一人で食べられるようになった。次に,着脱衣については,9か月から1歳6か月ごろまではほぼ全面的におとなが行うが,1歳9か月ごろから自分でしようとし始め,2歳9か月から3歳までには一人で可能になった。これらの自立行動の発達過程における子どもと大人の葛藤・
対立の特徴は,9か月から1歳9か月までは①おとなの促し・要求行動に対する子どもの拒否,②子どもの要求行動に対するおとなの非受容,③おとなの援助・手伝いに対する子どもの拒否を特徴とするが,2歳から3歳までには,①②③に加えて,④おとなに共有されない子どもの“こだわり” ⑤子どものつもり・みたてのズレ,などが加わることが特徴であった。
 さらに,保育園と家庭の両場面において同一の子ども10名を1~数時間ビデオ観察した。結果の詳細な分析はこれからの課題であるが,泣きの頻度・原因・それへの対応など両場面間で大きく異なり,子どもにおける両場面への対応の差異は1歳を超えたばかりの子どもにも見られる特徴であることがわかった。今後はさらに事例数を増やすとともに正規の分析に着手する。