表題番号:2004A-274 日付:2008/03/16
研究課題色と香りの協調がもたらす心理的・生理的相乗効果
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 齋藤 美穂
研究成果概要
香りと色が組み合わされることによる心理的・生理的相乗効果を探るために調査および実験を実施した。
香りと色のマッチングペアとミスマッチングペアを抽出するための予備実験により選定された香り刺激4種(ピーチ、スペアミント、セダーウッド、バニラ)を3種のカラーパーティション(使用色:ペールレッド(plR)、 ビビッドブルー(vB)、 ダークイエロー(dkY))の中で被験者に呈示し、その環境下でイメージ評定と気分評定を求めた(イメージ:SD法16項目、気分:気分尺度20項目)。なお予備実験により抽出されたマッチングペアはplR+ピーチ、 plR+バニラ、 vB+スペアミント、 およびdkY+セダーウッド。 ミスマッチングペアはplR+セダーウッド、 vB+バニラ、 dkY+ピーチ、および dkY+バニラである。
 イメージ評定の結果から、色についてはミスマッチする香りが加わると色本来のイメージが撹乱され、香りについてはマッチする色が香りの特徴的なイメージをより強化する方向に作用することが分かった。しかし組合せによるイメージや気分作用は、香りと色それぞれの性質の単純な加算からは推測できない複雑さを持つことも示唆された。
次にマッチングペアとミスマッチングペアの環境条件下における生理的効果を探るためにCNV脳波、 心電図におけるHFの変動、そして CgA(クロモグラニンA)の測定を行った。香りと色のマッチングペアではCNVが減少し、ミスマッチングペアでは増加した。このことは調和する香りと色の場合は鎮静作用をもたらし不調和な場合は覚醒作用をもたらすことが指摘できる。さらに副交感神経の活動を反映する心電図R-R間隔でのHFを調べるとplR+ピーチ、 およびvB+スペアミントでは増加し、plR+スペアミント、 およびvB+ピーチの組合せでは減少することが分かった。よって調和しない組合せはストレスを誘導すると考えられる。またストレスの指標となる唾液中のCgAの測定ではvB+ピーチの組合せはvB+スペアミントの組合せよりCgAのレベルが高く、このことはミスマッチペアがよりストレスを引き起こす傾向の強いことを示している。