表題番号:2004A-273 日付:2005/03/24
研究課題性別判断をステレオタイプ化する肌色の要因
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 齋藤 美穂
研究成果概要
性別認知をステレオタイプ化する肌色の要因を探るために、男女の平均顔を作成した上で肌の色を変化させ、性別の印象が肌の色によりどのように変化するかを探る実験を行った。顔パタン、つまり形態的制約による肌色の認知の変化、及び肌色の変化による性別の印象の変化を把握するため、顔パタン3種(男性平均顔/男女平均顔/女性平均顔)、肌色明度5段階、唇色2種(唇色なし/薄紅)を設け、3要素により30種の顔刺激を構成した。CRTディスプレイ上に3秒間顔刺激を提示した後、肌色の明るさ及び性別の印象を0から100の数値で評定させ、順に口頭で答えさせた。尚、この際の対応は、色黒(0)-色白(100)、男性(0)-女性(100)とした。被験者は大学生及び大学院生の男女各27名(平均年齢:男性 22.00歳、女性 22.04歳)である。
横軸に肌色評定値、縦軸に性別評定値を取り、結果として得られた平均値に基づいて各刺激をプロットした結果、女性平均顔、男女平均顔、男性平均顔の各顔パタンにおける垂直方向(性別評定)の変化に興味深い傾向を指摘することができた。すなわち男性平均顔の散布はほぼ平坦であるのに対し、女性平均顔は右上がりの傾きを示していた。各顔パタンの回帰式は、y=0.170x+19.658(女性平均顔)、y=0.195x+42.017(男女平均顔)、y=0.362x+53.441(男性平均顔)となった。これらの傾きの違いは顔パタンによって肌色の影響の強さが異なることを示していると考えられ、特に女性の顔は肌色の明るさによって、男性的、女性的といった性別の印象が左右される傾向にあることが示唆された。さらに、女性平均顔に対する評定は他の2パタン以上に高明度の領域からプロットが開始され、より高明度の領域にまで達していた。すなわち、同じように調整された肌色であっても、女性寄りの形態が伴う場合には全体的に肌色の印象が色白方向へシフトし、逆に色黒の印象は弱まる傾向にあると考えられる。これらの結果は「女性は色白、男性は色黒」といった肌の色に対するステレオタイプが性別認知に影響を与えた可能性を示唆するものである。