表題番号:2004A-272 日付:2005/03/18
研究課題消化管運動調節に与る間質性細胞の細胞組織学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 小室 輝昌
研究成果概要

 間葉系由来のカハールの介在細胞(Interstitial cells of Cajal: ICC)が消化管蠕動運動のペースメーカーおよび平滑筋への興奮伝達機能を有することは、既に周知の事実となったが、その一方、多年に渡って蓄積されて来た腸管神経系の研究成果、例えば、各種ニューロンの支配領域、投射方向などを示す回路図に対応させ、どのように運動制御機構に関わっているのかを具体的に検討するまでの充分な成果は得られていない。
本研究では、このような考察のための基本的データを得るため、モルモットの小腸を材料として、ICC各型の三次元的構築、数量的特徴について検索を試みた。試料は全載伸展標本としてICCの描出にはc-Kit抗体、 神経要素にはPGP9.5抗体による免疫組織化学染色を施し、共焦点顕微鏡により観察した。

 生後6週令、腸管の円周約20mmの動物の空腸では、筋層間神経節は小腸の長軸に対して、およそ700~800ミクロンの間隔で配列しており、筋層間神経叢のICC-APは個々の神経節をカゴ状に取り巻いているのが明瞭に観察された。多極性の細胞の突起間の距離はしばしば200μmを越え、円周に沿った長さは平均約150μmで、円周あたりの数は約130個であった。
このことは、蠕動運動が腸管の長軸上の一点を通る腸壁の円周から起ると考えるとき、少なくとも約130個のICC-APが同時に発火する可能性を示唆するものである。深部筋神経叢のICC-DMPは同じく多極性の細胞であるが、突起は輪走筋に沿って走行するため、円周方向の突起の長さは約200~300μm、円周あたりの数は約80個、腸管長軸方向の細胞列の間隙は平均50μmであった。また輪走筋層内のICC-CMは輪走方向に平行に位置する長さ約250~350μmの双極性の細胞で、非常にまばらに観察された。