表題番号:2004A-261 日付:2005/03/20
研究課題予防外交としての環海洋越境広域経営の研究:アジア型マルチレベルガバナンスの創生
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 教授 多賀 秀敏
研究成果概要
 本研究『予防外交としての環海洋越境広域経営の研究:アジア型マルチレベルガバナンスの創生』は、昨年、一昨年度と2年度連続して行った『地方自治体主導型地域主義の研究-欧州・アジア・北米型モデルの比較分析-』の継続的研究でもある。
 この研究に臨むにあたり、「欧州で進展する『地方自治体主導の越境地域形成過程』をモデル化し、東アジアの萌芽的な自治体主導型の越境広域における地域ガバナンスのあり方を検討する。最終的には、欧州型の地域ガバナンスを東アジアの文脈に読み替え、自治体が主導するODAなどを利用した『越境広域経営』戦略を提言する」という目的を掲げた。社会科学の、とりわけ、比較研究に少なからずみられる傾向であるが、いざ研究を始めてみると、これもやらなければ、あれも欠かせないという課題が、後から後から浮かび上がってきては立ちはだかる。現実の世界は、Globalisation、Regionalism、Sub-regionalism、Micro-regionalism、Governance、FTA 等等、新たな試みに満ちあふれている。最終的には、本年も2005年3月16、17日に共同研究会を開催することで成果のまとめとした。とくに、COE「現代アジア学の創生」「リージョナリズムとグローバリズム・クラスター」第9班「東アジアにおける越境広域経営の比較研究」との合同開催を意識して、大学院学生の積極的参加を促した。25名の研究会参加者のうち15名が大学院学生で占められ、うち10名の報告者中4名、同じく10名の討論者中3名、司会進行は3名の博士後期課程学生がすべて担当した。
 前回の報告書を提出して以来、このメンバーとなっている研究者が、出版した単著共著は、1年間で11冊に達していた。誠に研究熱心な集団であり、報告、討論ともに水準が年々高くなり、緊張した2日間を過ごした。最終的には、単独の報告書としてまとめた。
 誠実に本年度の研究報告に即して本年度の成果をいえば、本年度は、「環海洋越境広域経営」「アジア型マルチレベルガバナンス」に対して、多様なレベルの Regionalism、多様な Issueから照射するところまでは到達できた。その先は、まだまだ Frontier で悪戦苦闘の挑戦を続けている。
 今後の予定として、本研究の研究協力者からなる研究会メンバーによるさらなる研究の進展・成果は、本研究会と密接な関係にある環日本海学会の第11回学術研究大会(2005年10月、弘前大学)でも様々な形で公開される予定である。「北東アジアのグランドデザイン」「欧州型越境広域のグランドデザイン」について、実務者が講演者として招聘される研究大会シンポジウムで、越境広域経営の実務者との議論で研究上の化学反応が起こり、メンバーの研究がさらに発展することが期待される。
 本報告書をもってこの分野の研究が終了したのではないことは言うまでもない。これを報告書の形で公開することで、さらに、多くの方々、各方面から、助言を頂戴できれば望外の幸せである。