表題番号:2004A-205 日付:2007/03/25
研究課題数値流体解析と光造形法を組み合わせた高性能人工肺の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 講師 小堀 深
研究成果概要
【目的】外部灌流膜型人工肺は、形状や中空糸配糸方法によってガス交換能が変化する。この人工肺の性能を実験によって定量的に評価することや、人工肺を試行錯誤によって設計することは多くの時間とコストを要する。そこで本研究では、人工肺の性能を精度良く評価できる数値解析手法を確立し、その手法を用いて人工肺を至適設計することを目的とした。
【方法】数値解析による人工肺の性能評価は、市販人工肺HPO-20H(泉工医科工業、東京)を解析対象とした。この人工肺の圧力損失と酸素移動速度を解析するために、汎用有限要素法解析ソフトと自作プログラムを使用した。また、数値解析による人工肺の至適設計は、HPO-20Hを基準とした。はじめに、中空糸配糸方法が性能に与える影響と、形状が性能に与える影響をそれぞれ評価した。次に、その評価によって得られた最適中空糸配糸方法と最適形状を用いて既存人工肺を改良した。最後に、改良した人工肺を小型化することにより、人工肺を至適設計した。
【結果および考察】人工肺の性能評価において、圧力損失および酸素移動速度は、実測値と解析値が良好に一致した。至適設計において、中空糸配糸方法だけを変化させる場合には、中空糸外径を285 μm、空間率を0.361にすることが最適であった。形状だけを変化させる場合には、モジュール半径を38.6 mm、モジュール高さを108.0 mmにすることが最適であった。また、最適中空糸配糸方法と最適形状をした人工肺は、既存人工肺と比較して膜面積が同じでありながら圧力損失を約56 %減少させることができた。さらに、この人工肺を小型化したところ、既存人工肺と比較してプライミングボリュームを45.5 %、人工肺体積を34.0 %、膜面積を46.2 %減少させることができた。性能の点からは、既存人工肺と比較して血液流量6 L/minで圧力損失を44.8 %減少させながら、酸素移動速度は5.97 %の減少にとどめることができた。
【結論】以上より、本研究は市販人工肺を解析対象として、その性能を精度よく評価できる数値解析手法を確立し、人工肺の至適設計を可能とした。