表題番号:2004A-199 日付:2005/02/23
研究課題バイオフィルム形成における微生物生態の数学的シミュレーションモデルの構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助教授 常田 聡
研究成果概要
自然環境中の微生物は,単独に浮遊して存在することはきわめて稀であり,その多くは微生物自身が生成する細胞外ポリマー(EPS)などにより固体表面に付着し,複雑な微生物コミュニティー,バイオフィルムを形成して存在している.このバイオフィルムは環境浄化プロセスにおいて大きな効用をもたらす反面,金属腐食やパイプのつまり,浄水の汚染などの原因にもなる.そこで,バイオフィルムの生態構造(種類,数,場所,活性など)やメカニズムを解明することが重要となってくる.解明された情報を基に,上記の現象を再現,予測することが可能となれば,環境浄化プロセスの設計・制御を行う際に非常に有用である.このために有効なのが数学的シミュレーションである.本研究では,2次元のCellular Automaton(CA)-hybrid modelを用いてバイオフィルムの多菌種多基質シミュレーションモデルの構築を行った。対象とする基質はC,NH4,NO2,NO3,O2,菌種は従属栄養細菌(HB),アンモニア酸化細菌(AOB),亜硝酸酸化細菌(NOB),不活性バイオマスである.また,酸素供給方向の異なる2つのバイフィルムを対象とし、ポピュレーション変化をシミュレートした.1系は,O2が他の基質と同じ方向,つまりバルク側から供給されるTop-down aeration型であり,もう1系は,O2が他の基質とは逆の方向,つまり担体側から供給されるMembrane aeration型である.その結果,4菌種(HB,AOB,NOB,Dead Biomass)において,Top-down型に比べMembrane型の方が,AOBの割合が大きくなったが,極端に異なる結果にはいたらなかった.一方、3菌種(AOB,NOB,Dead Biomass)において,Top-down型ではAOBが生菌の大半を占めていたが,Membrane型では時間経過によってAOBとNOBの割合が変化するという解析結果を得た.