表題番号:2004A-198 日付:2005/03/31
研究課題無溶媒反応を指向した多機能型高分子不斉触媒の創製
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助教授 柴田 高範
研究成果概要
「環境にやさしい化学 (Green Chemistry)」の理論化と実践が求められる今日、反応媒体として基質に対し大量に用いられる有機溶媒が大きな問題となっている。本研究は、不斉触媒と反応媒体の2つの機能を兼ね備えた高分子触媒の創製が最終目標である。溶媒を用いないことで、生成物と触媒の分離精製が容易になるだけでなく、触媒の再利用が可能であり、環境負荷が小さく、かつ経済効率の高い不斉触媒システムの構築が可能となる。
 本年度は、予備的実験として、近年注目されている新反応媒体の一つである有機イオン性液体中での触媒反応を検討した。有機イオン性液体は、(1) 大きな装置が不要、(2) 安価かつ取扱いが容易、(3) 目的に合わせて違う骨格をもつ物質の合成が可能、などの利点をもつ。
 その結果、イリジウム触媒を用いる1,6-エンインの環化異性化反応が、通常用いる有機溶媒であるトルエン中より、有機イオン性液体であるイミダゾリウム塩中で加速され、高効率的に生成物を与え、また反応媒体の再利用も可能であることを見いだした。これまで、水素化反応、カップリングなどの遷移金属錯体を用いる触媒反応で、イオン性液体が利用された例は知られているが、環化異性化反応では初めての例である。
 現在、無溶媒化反応へのステップとして、イリジウム錯体のイミダゾリウム塩への担持、さらには不斉反応への検討を行っている。