表題番号:2004A-194 日付:2005/03/04
研究課題固体高分子形燃料電池における輸送現象解明に関する実験及び数値モデルの構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助教授 草鹿 仁
研究成果概要
固体高分子形燃料電池の内部物質輸送現象を詳細に調査するため,小型単セル(均一場セル)に対して大流量のガスを供給することで,反応ガスの消費および水分の生成の影響を無視することができる均一な反応場を形成し,物質輸送現象に起因する低加湿運転時の分極現象について解析を行った.また,実験結果を理解するために触媒層内の物質輸送現象をアグロマレイトモデルにより記述した数値モデルを構築し,比較検討を行った.これらの検討から低加湿運転時のセル性能低下要因は,電解質膜のプロトン伝導性低下のみならず,触媒層内電解質のプロトン伝導性低下および反応ガスの溶解,拡散性低下の複合現象であることが明らかになり,それらの中でもとりわけ,電解質膜および触媒層内電解質のプロトン伝導性低下の影響度が大きいことが示された.
 さらにカソードの流路形状がセル性能に与える影響を調査するために,ピッチを固定し,ウェブ(ガス流路部)とリブ(集電部)の比率や流路形状(ストレート,インターデジテイティッド)を変化させ,性能試験を行った.高加湿運転時には,リブ下の反応面に高い酸素濃度を形成できるウェブ幅の広いセルや対流効果により液水の滞留を抑止しつつ高い酸素濃度を保つことができるIDセルにおいて高いセル性能が得られることが明らかになり,低加湿運転時にはリブ下の乾燥を抑止することができるウェブ幅の広いセルにおいて高いセル性能が得られることが示された.このように,フラッディングと乾燥の抑止性はトレードオフの関係にあり,運転条件および流路における位置(上下流)に適応した流路設計がセル性能を確保するためには不可欠であることが示された