表題番号:2004A-186 日付:2005/03/14
研究課題場の理論・熱場の理論に基づくボース・アインシュタイン凝縮系の解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 山中 由也
研究成果概要
 閉じ込められた中性原子のボースアインシュタイン凝縮系を(熱)場の量子論の立場から解析し、実験と比較をしながら、その理論形式を検証するこを目的をとして研究を行ってきた。特に、この系はトラップが存在し、並進対称性がない場合の大域位相対称性の自発的破れ現象と理解されるが、その機構の解明と検証が重要である。並進対称性のある場合と同様、Goldstoneの定理により、自発対称性の破れに伴い南部-Goldstoneモードが存在する。実際、離散ゼロ・モードを非摂動理論に取り入れなければ、場の量子論の基本的要請である正準交換関係を破ってしまうことが指摘されている。
 今回の研究論文(M. Okumura and Y. Yamanaka, Physica A348 (2005) 157-172)では、ゼロ温度ツリー近似で知られているWard-高橋関係式の成立を、有限温度・ツリー近似でも、成立することを証明した。有限温度の場の理論形式としては、実時間演算式形式で今回のような厳密な場の量子論の議論に適したThermo Field Dynamicsを採用した。
 こうした証明を通じて、ゼロ・モードを含む正しい準粒子描像を採用することが本質的であることを明らかにした。正準交換関係と矛盾しないゼロ・モードの導入の方法には、一般化されたBogoliubov変換法とBogoliubov-de Gennes法の2つのやり方が知られているが、前者に従って調べた。一般化されたBogoliubov変換法ではゼロ・モードに付随した赤外発散が現れるが、一方でその赤外発散の微妙な振る舞いが今回のWard-高橋関係式を保証していることを具体的に示した。
 このようにWard-高橋関係式が成立することは、準粒子描像で導入されたゼロ・モードがGoldstoneの定理が要求する南部-Goldstoneモードになっていることを意味している。