表題番号:2004A-184 日付:2006/10/24
研究課題マグネシウム系繊維状鉱物からの新機能性ナノポーラス素材創製に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 山崎 淳司
研究成果概要
 クリソタイル等のマグネシウムケイ酸塩鉱物は、酸処理によって無害化され、繊維状形態を残した高比表面積のシリカゲルに転換して利用する技術がすでに確立している。しかし、この酸処理プロセスで得られる繊維状シリカや溶出されるマグネシウムの有効利用は全くなされていない。本研究では、クリソタイル等アスベスト資源鉱物およびその廃棄物の酸処理により溶出されるマグネシウム、または安価な繊維状マグネシウム資源鉱物である水滑石(brucite, Mg(OH)2)、さらにアルミ合金洗浄使用液やアルミサッシ廃材から排出される高濃度アルミニウムは廃液を用いた、Mg-Al系層状複水酸化物の調製プロセスを検討した。
 Mg-Al系層状複水酸化物(ハイドロタルサイト)の調製は、基本的に従来法を基礎にして、適当な濃度の硝酸マグネシウムと硝酸アルミニウム(または塩化マグネシウムと塩化アルミニウム)の酸性混合溶液を調製した。このときハイドロタルサイトの生成条件として、Mg/Al=2~4とした。この混合溶液を、pH=11~12に調整したアルカリ溶液(代表的には、硝酸ナトリウム(または炭酸ナトリウム)+水酸化ナトリウム水溶液)中に滴下すると直ちにゲル状ハイドロタルサイトの共沈物が生成する。これを通常は70~80℃で1~2日間エージングすると高結晶性ハイドロタルサイトが得られる。ただし、この調製法により得られる高結晶性ハイドロタルサイトは、CO32-およびSO42―に強い陰イオン選択性を示した。ここで、試料の物性に大きな影響を与える因子は、結晶子サイズ、Mg2+/Al3+比、滴下速度、pH、熟成条件(温度、時間)であることが分かった。とくに結晶子サイズは20 nm以下でサイズ効果により、イオン吸着・交換選択性が変化することが示された。