表題番号:2004A-181 日付:2006/03/25
研究課題チタノシリケートETS-4支持膜の開発と窒素/酸素分離特性の検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 松方 正彦
(連携研究者) 理工学部 助手 稲垣 怜史
研究成果概要
 ETS-4は結晶性チタノシリケートであり,結晶構造に由来する均一で剛直なミクロ孔を有する。また,Ti原子はETS-4骨格中で4配位と6配位の2種類の配位構造を形成するが,4配位Tiサイトは陽イオン交換サイトとなりうる。ここにNa+,K+,Sr+などのアルカリ金属イオンが交換することで,ETS-4のミクロ孔径を狭めることができ,チッ素・酸素を分子ふるい作用により,分離することが可能となる。本研究では,このような特長をもつETS-4を多孔質支持体上に薄膜化し,チッ素・酸素を膜分離する手法を開発することが目的である。その中で本年度は,粉末のETS-4の調製条件の検討を行った。
 ETS-4はSi源としてケイ酸ナトリウム,Ti源として塩化チタンまたはTiアルコキシドを用いる。ただし,用いるTiの種類により,結晶化後に得られる生成物が変わることが知られている。Ti源としてTiブトキシド・モノマーを用いて,SiO2: TiO2: Na2O: H2O: H2O2=1.0: 0.10: 0.65: 67.5: 0.60の組成で原料混合物を調製し,190℃,静置条件下で48時間結晶化を行ったところ,生成物はETS-4であった。ここで原料にH2O2を加えるのは,Tiブトキシドの加水分解を緩やかに進めるためであり,このようにして得られた水酸化チタンモノマーがシリカ源と重合し,結果,ETS-4への結晶化が進行したと考えられる。いっぽう,Ti源に塩化チタンを用いて,SiO2: TiO2: Na2O: H2O: HCl=1.0: 0.30: 1.25: 9.88: 0.32の組成で原料混合物を調製し,190℃で24時間結晶化を行った場合には,結晶性の低いdenseなチタノシリケート相とquartzが生成した。塩酸を用いて塩化チタンを激しく加水分解した場合には,チタネートとシリケートとの重合があまり起こらなかったために,ETS-4が得られなかったと考えられる。
 これまでにTi源の加水分解速度を制御することで,再現よくETS-4が得られることが明らかなった。今後はこの手法を用いて,ETS-4を多孔質支持体上への薄膜化を行い,また,得られた薄膜のチッ素・酸素分離試験を行い,高い分離性能を示すETS-4薄膜の開発を進めていく。