表題番号:2004A-179 日付:2005/04/11
研究課題ミクロ多孔性無機膜による分離場の構築と新規な反応分離装置の開発研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 松方 正彦
研究成果概要
1. 緒言
細孔径0.74 nm、Si / Al = 1.5~3.0で親水性をもつY型ゼオライトを膜とすることで、水 / 有機物からの脱水や有機混合物分離への適用が期待されている。透過分離性能の高い膜を調製するためには膜構造を制御することが重要になる。しかし、Y型ゼオライト膜構造の制御について報告した例は少ない。そこで、本研究では、Y型ゼオライト層の形成過程、および種々の調製条件が膜構造に及ぼす影響を確認することを目的とした。
膜構造に影響する因子には、支持体上の種結晶、ゲル組成、エージング条件、結晶化条件などがある。そこで種々の結晶化条件が膜構造に及ぼす影響を検討した。また、多孔質支持体上では、ゼオライト層の形成過程を観察することは困難であるため、無多孔平板上における種結晶を用いたY型ゼオライト層の形成過程を検討した。

2. 実験方法
NaYを粉砕し、蒸留水を加えて調製したスラリーに、アルミナ支持体を3 min浸漬した後、ディップコート法によって支持体上に種結晶を塗布した。種結晶を塗布した支持体および塗布していない支持体上に静置あるいはかく拌条件下で結晶化した。結晶化後の支持体は、蒸留水によって流水洗浄、もしくは流水洗浄した後浸漬洗浄した。膜の透過分離性能は10wt%水 / エタノールを用いたPV試験によって評価した。
スピンコート法によりアルミナ平板上に種結晶を塗布した後、かく拌条件下、373 Kで結晶化(1~13 h)した。結晶化後の平板は流水、浸漬洗浄した。結晶化後の平板上でのY型ゼオライト層の形成過程をFE-SEMにより観察した。

3. 結果・考察
3-1. 製膜条件の検討
種結晶を塗布してない支持体を用いて結晶化したところ、Y型ゼオライト層は形成しなかった。このことから、Y型ゼオライト膜の調製においては、種結晶を塗布することによりゲル層中で核発生し、Y型ゼオライト層が形成すると考えられる。
静置あるいはかく拌条件下いずれで結晶化した場合にも、長時間結晶化すると膜中のFAUの結晶化度が減少し、GISが生成し始めた。膜におけるFAUの結晶化度の減少は、結晶の溶出および熱力学的に安定なGISへの相転移によるものだと考えられる。
結晶化した後、流水洗浄した膜のPV試験を行った結果、結晶化後蒸留水に浸漬すると、フラックスが大幅に向上することを見いだした。結晶化後の膜はアモルファスで覆われており、浸漬洗浄することでアモルファスが溶出したと考えられる。

3-2. 平板上でのY型ゼオライト層の形成
種結晶を用いたY型ゼオライト層の形成においては、ゲル層中での核発生と結晶成長が同時に進行していることが示唆された。そしてさらに結晶化時間を長くすると、Y型ゼオライトが溶出し、GISが生成していくことを確認した。