表題番号:2004A-171 日付:2005/03/18
研究課題機械システムの自己複製に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 橋本 周司
研究成果概要
 今年度は、機械による自己増殖の具体的な問題として、環境制御による自動組立をとりあげて、複数種類の微小部品から閉じた三次元構造を自動組立するために、以下のような前提条件を考えた。まず、Whitesidesらの方法と同様に、組み立てる部品として5mm角のアクリルキューブを複数用意し、結合面に低融点のはんだで覆われた銅箔パターンを貼付する。それらのコンポーネントを55℃に保った酢酸水溶液中に入れ、攪拌し、組立を行うことを検討した。また、ランダムな初期状態にあるコンポーネントから8つのコンポーネントからなる、閉じた立方構造を自動組立によって実現することを目標とした。このようなシステムで設計すべき点は、自由エネルギー最小状態は8つのコンポーネントからなる閉じた立方構造、エネルギー障壁はコンポーネントデザイン、自動組立のための環境は水溶液の攪拌となる。そこで、実験では自動組立による目的の構造の形成とともに、攪拌の強さ(外力)や時間、コンポーネントデザインを変えることによってどの程度選択性(収率)を制御することができるかについて調査した。
 複数種類の部品から三次元的な閉じた構造を自動組立するには、部品は「どの部品と、どのような姿勢で結合する」というように、より選択的に結合を行わなければならない。そこで、複数種類の部品からより高度な構造を自動組立するには部品の選択性(質と量)を改善する必要がある。ここで、選択性の質は「その選択的な結合がどの程度再現性をもって起こりうるか」という選択的な結合の確率を意味し、選択性の量は「どの部品とどの部品がどのような状態で結合するという数」、つまり選択的な結合の多様さを表す。そこで、このような部品の選択性を実現するためのコンポーネントのデザインについて実験的に検討した。部品表面のはんだ融着面の形を適切にデザインすることでランダムな初期状態にある2種類のコンポーネントから確率的に目的の三次元閉構造を得ることができた。しかし、まだその収率は低く、完全な立方体構造が得られることは多くない。今後、途中まで正しく組み立てられている集合体を再度組立に使うようなサイクルを考えることによってさらに収率を高めることが望まれる。