表題番号:2004A-168 日付:2006/11/11
研究課題野崎-檜山反応の不斉触媒化研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 中田 雅久
研究成果概要
我々は、新しい不斉リガンドの設計と合成に基づく高エナンチオ選択的な野崎―檜山アリル化反応の開発に成功し、幅広い基質に対して適用できることを報告している。そこで我々は、次に触媒的不斉野崎ー檜山プロパルギル化について検討した。その結果、好結果を得たのでここに報告する。
まず、野崎―檜山アリル化反応に用いた不斉リガンドを用い、ベンズアルデヒドとプロパルギルブロミドの反応を試みた。その結果、18時間で反応は終了し、S体の生成物が28%eeで80%の収率で得られた。このエナンチオ選択性はアリル化反応のエナンチオ選択性と逆である点が興味深い。また、この反応においては副生が予想されたアレニルアルコールはまったく生成しなかった。
不斉リガンドのオキサゾリン環上の置換基、反応溶媒、の検討、種々のアルデヒドとの反応を行った。その結果オキサゾリン上の置換基がt-Bu、溶媒がDMEのとき、pivalaldehyde ではエナンチオ選択性は98%eeまで上昇した。この反応においては、アレニルアルコールはまったく生成しなかった。
オキサゾリン上の置換基との立体反発から、アレニル基はアピカル位を占める傾向があり、オキサゾリン上の置換基が小さいときはアルデヒドがエクアトリアル位に配位しやすい。したがって、オキサゾリン置換基からの不斉誘起によりアルデヒドのSi面での反応が有利となる。一方、オキサゾリン上の置換基が大きいときは立体反発からアルデヒドがエクアトリアル位に配位しにくく、アピカル位で配位するため、Re面での反応が有利である。この仮設は得られた結果をうまく説明できる。
以上まとめると、野崎―檜山プロパルギル化のエナンチオ選択性は、リガンドのチューニングにより変化させ得ることがわかった。そして、その変化を説明できるモデルを提案できた。今後、他の野崎―檜山反応についても検討を進める予定である。