表題番号:2004A-167 日付:2007/11/15
研究課題不斉触媒反応を利用するキラルビルディングブロックスの創製とその天然物合成への応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 中田 雅久
研究成果概要
不斉誘起反応は新たな不斉中心を構築する手法として重要である。我々は、ケイ素架橋型反応が立体的に混んでいる面から優先的にジアステレオ選択的反応を起こし得ることに着目し、ケイ素架橋型分子内求核付加反応を世界で初めて開発した。これはアルドールの水酸基をヨードメチルジメチルシリル化した後にt-BuLiで処理して発生させたケイ素架橋型のアニオンを分子内のカルボニル基に求核付加させ、不斉3級アルコールを構築する新手法である。この手法によりTaxolのC1位の不斉3級アルコール部位の構築に成功し、玉尾酸化を経てキラルなA環部位の合成を達成した。また、同時に基質のエノラートが分子内でヨードメチルジメチルシリル基に高収率で反応することも世界で初めて見出した。
 また、当研究室において創製したキラルビルディングブロックスを活用する研究として、すでに報告済みのキラルビルディングブロックと触媒的不斉分子内シクロプロパン化反応により得たキラルビルディングブロックを結合し、分子内アルドール反応により3環性化合物とした後、脱水し、ケトンへの1,2付加によるイソプロペニル基の導入後、水素添加により末端アルケンの選択的還元と同時に保護基の除去、脱水反応、酸性条件下における二重結合を異性化し、共役ジエンを得た。続いて、ケトンの隣接位にメトキシカルボニル基を導入し、さらにヨードメチル基を導入後、SmI2による環拡大反応により7員環を構築、二重結合を導入して、トリエンを得た。最後に、Sniderらの手法に従い、ケトン及びエステルの還元、続いて一級水酸基のみを選択的に酸化してNGF合成促進物質である(+)-allocyathin B2の初のエナンチオ選択的全合成に成功した。