表題番号:2004A-157 日付:2006/03/28
研究課題ライフサイクル設計のためのエージェントベースライフサイクルシミュレーション
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 髙田 祥三
研究成果概要
 資源・環境問題の深刻化にともなって循環型生産システムの実現が必要とされている.これからの生産システムは,モノを社会に提供することではなく,資源は循環させながら,社会に必要な機能を提供することが求められる.しかし,これまでの,生産・流通・販売の仕組みを前提とするのでは,ビジネスとして成立する循環型生産の実現は困難であり,循環に関わる種々の主体の行動様式とそれを規定する条件を変更することで,初めて循環型ビジネスが成立すると考えられる.このためには,製品ライフサイクルを適切に設計するとともに,製品ライフサイクルを構成する,製造,流通,販売,使用,回収,再生などのプロセスに関わる個々の主体の振舞いを評価する必要がある.本研究では,これらの独立した主体が形成する循環型生産システムの振舞いを評価するために,マルチエージェントシミュレーション技術を用いたライフサイクルシミュレーションの実現を目的としている.
 本年度は,このための要素技術開発として,リース型製品の回収予測についての検討を行った.これは,使用者が,どのようなタイミングで製品の使用を中止するのかを予測するためのモデルを構築することを目的としている.具体的には,リース契約が多い複写機を例にとり,実際の販売および回収データを用いて分析を行った.この結果,リース契約のユーザの中には,リース期間が満了するまでにほぼ使用を中止するリース型ユーザと,リース期間に関わらず買取の場合と同じような使用中止行動をする買取型ユーザの2種類があることが分かった.また,使用中止割合の時間推移に関わる要因を分析した結果,期末の回収量が増えるといった季節変動成分と,使用期間が,3年,4年といったきりのよい時期に回収量が増える年変動成分が存在することが明らかになった.さらに,これらの各要因を考慮することで,使用時間に対する使用中止割合の基本変化パターンを販売量の推移に基づいて再構成することで,特定時点の回収量が予測できることを示した.