表題番号:2004A-155 日付:2005/04/08
研究課題裸地斜面の侵食過程に及ぼす粘着性土の影響とこの過程に関する数値解析モデルの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 関根 正人
研究成果概要
流域における健全な土砂収支のあり方について今後考えていくためには,「河川上流域にある裸地斜面や崩壊地から生産・流出される土砂量」を定量的に評価していく手法と,その予測技術とが不可欠であると言えます.しかし,これについては必ずしも十分と言える情報があるわけではなく,十分な精度をもってこの土砂量を予測することもまた容易でないと言わざるをえません.そこで,著者らは,次のような二つの段階に分けて研究を進めてきました.
まず,第一に,粘着性土を含まない砂礫からなる斜面の浸食過程を対象として,室内模型実験と数値解析を通じて検討を行いました.その結果,現象の理解はかなりのところまで深まり,あわせてその数値予測も十分に満足のいく精度で行うことが可能になったと判断しております.成果として特徴的な点を挙げれば,浸食により斜面上には樹枝状の流路が形成されること,斜面下端からの流出土砂量の時間変化は,この流路内で進行する土砂の浸食・堆積の素過程と密接に絡み合いながら生じること,などが明らかになりました.
次に,実際の裸地斜面や崩壊地を構成する土砂には,その比率は異なるものの粘着性土が含有されていることに鑑み,前述の浸食の過程に及ぼす粘着性土の影響について検討してきました.このような検討は,実験技術的にも難しいことから,これまでほとんど手つかずの状態で残されてきました.本研究では,助成費を活用して室内実験装置を再構成し,新たな計測システムを導入することで,これまでになく制御された実験を行い,土砂の粘着性が斜面浸食過程に及ぼす影響の本質に迫ることできたと考えています.ただし,問題の複雑さから今後に残された課題も少なくなく,引き続き検証実験を継続することで更なる発展を図る必要がありますが,この研究によって今後の研究をいかに進めるべきかが明らかになり,この点でも価値ある研究の基礎固めができたと考えています.