表題番号:2004A-149 日付:2007/11/16
研究課題地下水透過型浄化壁の開発と水循環系への適用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 榊原 豊
研究成果概要
 化学(窒素)肥料の散布や畜産廃棄物の土壌還元等により、地下水硝酸汚染が先進国を中心に顕在化している.このような地下水汚染の対策技術として、筆者らは風力発電等により得た電解水素を地下水帯水層内に注入し、硝酸イオンを無害な窒素ガスに脱窒処理する方法を提案している.
 本研究では実験室規模の帯水層を作製し、その内部に異なる粒子(0.1~10mmの砂、砂利等)を充填した透過壁を構築した.次に、硝酸イオン含有地下水を連続供給し、水素ガスを注入しながら脱窒処理実験を行った.その結果、全ての透過壁で脱窒処理が可能であるが、その性能は粒子径に大きく依存することがわかった.これは透過壁下部に注入された水素ガスが透過壁内部では逆ツリー状に流路を形成しながら上昇するが、この際の総括的な溶解速度が粒子径に影響されるためである.
異なる粒子径の透過壁に対する総括移動容量係数を測定し、また、既往研究に従って、透過壁の浄化性能を表す数理モデルを構築した.また、モデルより得られる計算値と実測値を比較した.その結果、粒子径がある程度大きな透過壁では数理モデルと実測値は概ね一致したが、粒子径が小さいと、微生物膜の剥離・目詰まりによる編流が生じ、その結果、実測値は計算値よりかなり小さくなった.今後は、数理モデルを改良すると共に、目詰まりが生じにくい透過壁構造について検討する予定である.