表題番号:2004A-148 日付:2005/04/08
研究課題強誘電ランダムアクセスメモリー材料での強誘電疲労特性とその分域構造
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小山 泰正
研究成果概要
次世代を担う記録媒体として、近年強誘電体を用いた強誘電ランダムアクセスメモリー(FeRAM)材料が、広く注目を集めている。ここで、この材料に要求される最も重要な因子は、電場による分極反転に際して誘電疲労を生じないという特性で、このため候補材料としてのPb(Zr1-xTix)O3(PZT)、SrBi2Ta2O9(SBT)、およびBi4Ti3O12(BT)に関して、その誘電特性の詳細が検討されている。その結果、Laを添加したBi4-yLayTi3O12(BLT)において、実際、誘電疲労を示さない薄膜材料の開発が行われている。そこで本研究では、より良質なFeRAM材料の開発を目指し、誘電疲労を生むことのない強誘電分域構造の特徴を明らかにするため、上述のPZTとBLTについてその結晶学的特徴を透過型電子顕微鏡を用いて調べた。具体的には、動力学的効果によるフリーデル則の破れを利用し、二波励起の条件のもとで暗視野像を撮影することにより、これら酸化物での強誘電分域構造の決定を行った。
[PZTでの強誘電分域構造]
 本研究では、まずPZTのx=0.50付近に存在する強誘電正方晶、単斜晶相、および菱面体晶相について、その強誘電分域構造の決定を行った。決定したこれら相での分極ベクトルの方向は、正方晶相が[001]方向、単斜晶相が[001]+[110]、および菱面体晶相が[111]方向である。分域構造については、正方晶相が{110}90°と{100}180°、また菱面体晶相は{110}109°および{112}180°分域壁から成る構造を有していることが確認された。一方、正方晶/単斜晶相境界付近に現われる単斜晶相は、ナノスケールを持つ正方晶領域と2つの単斜晶領域の交互配列によって特徴付けられていることが明らかとなった。
[BLTでの強誘電分域構造]
 PZTに関する研究に引続き、誘電疲労を生じることのないBLTでの強誘電分域構造について、La量y=0.75および1.0を有するBLT試料を用いてその詳細を調べた。まず強誘電斜方晶相から得られた電子回折図形中には、I4/mmm構造による基本格子反射に加え、q=[1/2 1/2 0]位置に超格子反射が存在し、その構造は酸素八面体の傾斜変位を含むことが分かった。さらに200および-200基本格子反射による暗視野像はBLTにおける強誘電分域構造の存在を明らかにした。その特徴は、分極ベクトルの方向がI4/mmm構造の[100]方向であること、その分域の形状が<100>方向に伸びた楕円形状あるいはバンド形状を有していることである。