表題番号:2004A-147 日付:2005/03/03
研究課題エコマテリアルとしての土壁構法に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小松 幸夫
(連携研究者) 理工学術院 助教授 輿石 直幸
研究成果概要
本研究は、日本古来の木舞土壁構法の科学的・工学的な解明と、地球環境保全や室内空気汚染の問題に貢献する土を用いた新しい建築生産技術の提案を目的とするものであり、以下の調査・実験を行った。
1.文献調査
壁土に関する既往研究と、日本壁および土を用いた海外の建築に関する書籍を調査した。
2.現場見学・ヒアリング調査
熊本城復元工事現場を見学し、文化財建造物の設計監理者にヒアリングを行った。
3.実験
荒壁の両面に中塗りを施した壁厚70mm程度の木舞土壁を想定し、京都、広島、秋田、滋賀および埼玉の経験豊富な左官職に、各地の標準的な荒壁および中塗り用の練り土を製造してもらった。練り土の含水比を速やかに測定し、スサと壁土を分離してスサ混入率を求めた。
壁土については、下記の試験を行い、物性間の相関分析や産地間の物性比較を行った。
① 元素組成
② 強熱減量
③ 土懸濁液のpHおよび電気伝導率
④ 土粒子の密度および粒度
⑤ 液性限界(流動曲線)
⑥ 収縮定数(収縮曲線)
⑦ 一軸圧縮強度
結果を要約すると以下の通りである。
(1) 粒度の細かい壁土ほど、湿潤時の粘性は高く、乾燥固化に伴う収縮および乾燥後の強度は大きい。
(2) 滋賀や埼玉では、荒壁と中塗りとで粒度の差が大きいため、粘性、乾燥収縮、強度などの性質の差も大きい。一方、京都では荒壁と中塗りの粒度にほとんど差がないため、極めて性質が類似した荒壁と中塗りを塗り重ねていることが明らかになった。